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空に星が輝く様に
349部分:第二十六話 聴かれたことその六

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第二十六話 聴かれたことその六

「今日は」
「それ私の好物」
「あっ、そうだったわね」
「影響受けてるのわかった?」
「そういうことだったの」
「そう、そういうこと」
 まさにそうだというのであった。
「友達はお互いに影響を受けるものだ」
「だから私もスバゲティをなのね」
「一方だけが影響を受ける訳じゃないから」
「私も愛ちゃんも」
「その通り。じゃあ私は」
「愛ちゃんは?」
「これ読む」
 こう言ってであった。同じ三島由紀夫のコーナーからだ。一冊の本を問い出した。そのタイトルはサド侯爵夫人、我が友ヒトラーだった。
「これに」
「その作品は」
「戯曲だったね」
「うん、それ読むのね」
「こういう作品好きだから」
「戯曲がなの?」
「戯曲もだけれど作品の内容も好きだから」
 そちらもだという椎名だった。
「倒錯とか政治とか。そういうのが」
「ええと、かなり危ない作品らしいけれど」
「そういうのが好き」
 椎名の口の端に笑みが宿った。そのうえでの言葉だった。
「私は」
「そうだったの」
「私ドサドだし」
 これは狭山がいつも言っていることだ。確かにその通りだった。椎名は誰がどう見ても根っからのそちらだった。間違えようのないまでにだ。
「だから」
「それでサド侯爵夫人なの」
「何時かフランス語もマスターして」
 椎名の言葉は続く。
「サド侯爵の本を原語で読みたい」
「あの、それは幾ら何でも」
「破っていいタブーと破っていけないタブーがある」
 それがわかっているところもまた椎名だった。
「これは破っていいタブー」
「破っていいタブーなの」
「サド侯爵の本を読むことは」
「そっちはなのね」
「そういうこと」
「それじゃあ」
 月美は椎名のその言葉を聞いてだ。もう一つの言葉について尋ねた。
「破ったらいけないタブーは」
「人に危害を加えるタブー」
 それだというのである。
「傷つけることがそれ」
「そうなの」
「そう。だからそれは絶対にしない」
 これが椎名の言う破ってはいけないことだった。
「何があっても。それに許さない」
「許さないの」
「そういうことだから」
 そしてだ。月美の方を見てだ。こう言うのだった。
「つきぴー」
「ええ」
「行こう」
 こう言うのであった。
「買いにね」
「本を」
「そう、カウンターに行こう」
 具体的な言葉だった。
「それで買おう」
「うん、それじゃあ」
「それで次は」
「スパゲティね」
「たっぷり食べよう」
「ここのパスタって」
 月美はこんな話もしてきた。パスタ自体のことをだ。

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