第四章
[8]前話
「あれだけのことをしてくれたんだ」
「車が埋もれそうになる位に積もっていたのに」
「そこを頑張ってくれたんですからね」
「自衛隊の人達が一番距離をやってくれてましたよ」
除雪をというのだ。
「そうしてくれたっていうのに」
「そこでたった、ですからね」
「それは言われますよ」
「こっちの状況も知らなくて暖かくて雪のない東京で偉そうに言うんですから」
その青森にいる人間としてだ、職員達も話した。彼等にしても今回の大変さは身に滲みてわかっていることだった。
「視聴者も怒りますよ」
「見ている人も」
「何も知らない、わからないで悪意出して言ったら」
「彼等がそこまで出来るのか」
知事は苦い顔のままさらに言った。
「どうかな」
「出来ないでしょうね」
「それこそ我々よりも」
「ぬくぬくと安全な場所で言ってるだけの連中には」
「何も出来ないですよ」
「そうだな、絶対に」
知事の言葉は冷たいものだった、それでだった。
今回のその報道番組での発言は馬鹿にして終わった、だが因果応報はこの世の摂理であり。
今度は東京で大雪となった、当然ながら件の報道番組を抱えているテレビ局のビルの周りも大雪に囲まれ。
雪かきの必要が出た、だが彼等は。
まともに雪かきが出来ず数だけいてスコップやシャベルを持って右往左往しているだけだった。その彼等を見てだ。
雪が降る中で人々は彼等を指さして嘲笑した。
「ほらほら、早く雪かきしろよ」
「たったそれだけなんだろ?」
「自衛隊の人達より出来るんだろ?」
「じゃあテキパキやれよ」
こう言うのだった、ネットで動画も実況しつつ。
「頑張れ頑張れ」
「自衛隊の人達はたっただろ?」
「本社ビル前位朝飯前だろ」
「誰の助けも借りずにやれよ」
「自衛隊の人達なんか絶対に呼ぶなよ」
彼等は誰も助けなかった、見ればスーツと革靴やスカート、ヒールで雪かきをしていて。
その中には有名なキャスターもいるが雪の中で転び雪まみれになった、それで周りに八つ当たりして怒鳴り散らすが。
このキャスター、多摩川融の無様な本性もネットで実況され。
「おうおうこけたよ」
「それで周りに八つ当たりしてるよ」
「これ祭りだな」
「多摩川らしいぜ」
「普段偉そうにしているのにな」
「あのたったの奴もこけたぜ」
多摩川だけでなくだった、そのキャスターも無様にこけた。しかも。
頭から雪に思いきり突っ込み雪だらけになった顔で起き上がった、皆その『恰好よい』姿に腹を抱えて笑って。
その姿も実況された、誰も彼等を庇わず助けようとしなかった。たったそれだけのことも出来ない彼等を。
たったそれだけ 完
2018・2・19
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