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空に星が輝く様に
348部分:第二十六話 聴かれたことその五
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第二十六話 聴かれたことその五

 家具が見えた。それを見ながらまた言った。
「あそこに」
「あそこは確か前は」
「電化製品のコーナーだった」
「そうだったわね、じゃあ」
「あえて場所を変えた。これは多分」
 椎名の灰色の頭脳が動く。そのうえでの言葉だった。
「営業努力」
「これがなのね」
「考えて場所をコンバートさせて」
「どちらも売れるようにしたのかしら」
「商品は置かれる場所によっても売れ行きが違う」
 その頭脳の働きのままだ。語る椎名だった。
「そういうことだから」
「それでなの」
「そう」
 椎名はまた言った。
「それでだから」
「細かいところが大事なのね」
「細かいところこそが命」
 月美にこう言い加える。
「わかってくれたら嬉しい」
「ええと、私そうしたことはまだ」
「よくわからない?」
「御免なさい」
 月美は謝る言葉も口にしてきた。
「そういうものなのかなって思うけれど」
「じゃあ覚えておいて」
「覚えておくの?」
「覚えておいたら何時か同じようなことを見たら」
「その時になの?」
「そう、わかるから」
 それでだというのである。
「だから覚えておいて」
「わかったわ」
 まだよくわからない顔だがそれでも頷いた月美だった。
 そのうえでだ。今度は本屋に向かった。二人はその本屋の純文学のコーナーの前に来た。そうしてそこでまた二人で話をするのだった。
「今日は何の本を買うの?」
「三島由紀夫のつもりだけれど」
「三島なの」
「そう、潮騒」
 それだというのである。
「それを読もうかなって思うけれど」
「それなの」
「どうかしら」 
 読む本の題名を話したところで椎名に問うた。
「それで」
「いいと思う」
「いいのね」
「三島は文章がいい」
 椎名は三島由紀夫のそこから話した。
「しかも作品が奇麗」
「そうよね。金閣寺もね」
「あれは私も読んだ」
「そう、愛ちゃんも」
「純文学にも最近凝ってる」
 こう言うのだった。
「そう、つきぴーの影響で」
「私のなの」
「そう、つきぴーが読んでるから私も読んで」
「何か私が影響与えてるっていうと」
「友達だから」
 だからだというのだった。
「だから影響受けてる」
「そうなの」
「つきぴーもその筈だし」
「私も?」
「そう、つきぴーも」
 彼女もだとだ。こう話すのだった。
「例えばお昼は」
「お昼は?」
「何食べたい?」
 椎名は三島由紀夫のその本を本棚から取り出しながら話すのだった。それは月美が読みたいと言っていたその潮騒であった。
 それを月美に手渡しながらだ。問うのだった。
「それで」
「ええと、スパゲティ」
「ソースは?」
「ネーロがいいか
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