第一章
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モナリザ
モナリザ、レオナルド=ダ=ヴィンチの絵について同じ会社で働いていることが縁で交際している彼は私にデートの終わりの方でこんなことを言った。
「一回見てみたいな」
「フランスまで行って?」
「うん、ルーブルまで行って」
帰り道、夜のその道を二人で歩いている時にこう私に話した。夜道は静かで灯りに照らされているところと暗いところがコントラストを成している。
「見たいね」
「モナリザなんてね」
「見たくないんだ」
「だって教科書でも見たじゃない」
もうあの絵をどれだけ本で見たかわからない、教科書でも普通に出るしテレビでもだ。あんなに有名な絵はそうそうないだろう。
「だからね」
「見たいと思わないんだ」
「見たってね」
そうしてもだと思った、本当に。
「何でもないでしょ」
「知ってる絵がそこにあって」
「そうよ、何とも思わないでしょ」
「いや、実物を見たいんだよ」
彼の言い分はこうだった。
「この目でね」
「本やテレビに出ているものじゃなくて」
「実物をね」
実物のモナリザ、それをというのだ。
「見たいんだよ」
「それでフランスのパリまで行って」
「ルーブルにも行って」
そうしてというのだ。
「見たいんだよ」
「ううん、パリに行くならね」
「ルーブルに行くなら?」
「他のものを観たらいいじゃない」
ルーブル美術館は回るのに四日かかると聞いている、一体どんな美術館なのか正直想像もつかない。
「モナリザじゃなくて」
「勿論他のものも見るけれど」
「第一はモナリザ?」
「そう考えてるんだ」
「そうなの、けれどね」
「君としてはだね」
「モナリザはね」
どうしてもと言うのだった。
「知ってるから」
「いいんだ」
「そこまで執着しなくてもいいじゃない」
「僕にとっては本当にそうしたものだから」
モナリザ、この絵はというのだ。
「一度本当にね」
「その目で見たいっていうのね」
「その機会があれば」
私を家まで送ってくれる時に話してくれた、私はそんな彼にあんな誰でも知っている絵を今更見たいのかと不思議で仕方なかった。
けれど彼のその想いは募って私にこんなことを言ってきた。
「今度の旅行パリにしない?」
「モナリザを見たいのね」
「勿論他の場所もだけれど」
「パリね」
この街のことから考えることにした、そのうえで彼に考える顔で答えた。
「食べたいものもあるし」
「本格的なフランス料理?」
「高くなくてもいいの」
そこはこだわらない、というか高いフランス料理なんて本場の話を聞くとそれこそお金持ちの食べるものだ。
「甘いものも食べたいし」
「クレープとか」
「エッフェル塔や凱旋門を見て」
「観光名
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