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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第一部 原作以前
第三章 神前決闘編
第十一話 美女駆込
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だ祖国の屋台骨を更に脆く壊れやすいものとしてしまい、隙を伺っていたアンドラゴラス王率いるパルス軍に一気に滅ぼされる結果を招いたのだ。阿呆だな。

トゥラーンは自治区としてパルスに併合され、幾人かの古老による合議制での自治を認められるようにはなったが、壮丁のほとんどを失い、反抗する力のカケラすらも残らなかった。アルスラーンがペシャワールから進軍する隙にパルスに侵攻するどころか、原作が終わって更に数十年が経過する辺りまでトゥラーンの復興は望めないだろう。まあ、いい気味だな。略奪で成り立つ国家なんて、周辺諸国にとっては迷惑以外の何物でもないものな。

ラクシュにはあえてジムサを殺させないようにしていたが、パルスがトゥラーンに侵攻した際、クバードに生け捕りにされ、戦後はエクバターナで地下牢に入れられているらしい。一応まだ生きてはいるようだが、これじゃあ翼将になれるのかどうかも怪しいな。ジムサ以外はトクトミシュもブルハーンも死んだ。そして、イルテリシュを含め、トゥラーンの諸将の死体は諜者秘伝の溶解液で溶かされ、最早骨すら残っていない。これでザッハーク一党に悪用される事もあるまいさ。

シンドゥラ国内はほとんど平和と言っていい状況が続いている。親爺であるカリカーラ王はどうも原作よりも心身の衰えが目立つようだ。酒も女も原作ほどにはやらなかったと言うのになあ。原作では酒と女で身体を壊しつつも、息子たちの不甲斐なさから気を張っていたんだろうが、この世界での俺たちは原作より遥かにしっかりしていて、気を張る必要を感じなかったんだろうか。医者の見立てでは、まずシンドゥラ暦322年を迎えることは出来ないだろうと言う話だ。つまり、原作より死期が早まる可能性が高いと言うことだ。

兄の摂政としての能力には特に不足もなく、兄嫁サリーマとの夫婦仲も良好なようで、昨年嫡男が誕生し無事に成長している。王としても、この国の歴代の王の大半よりもまともな部類に入るくらいの力量はあるだろう。だったら、俺が王になる必要があるだろうか。

実のところ、今年に入る頃辺りから、俺は王になるという野心を捨てている。正式に兄に恭順を誓った訳でもないが、おそらく兄の方でも察してくれているだろう。このまま行けば、親爺はアトロパテネの戦い前後に崩御し、兄は無事即位、俺は兄の名代としてパルスの押しかけ援軍を率いる、ということになるだろう。

あの出来事が起こるまではそう信じて疑いもしていなかった。

とある新月の夜の深い闇の中を、俺の住む屋敷に突然駆け込んで来た者があった。薄絹のローブを纏った優美なシルエットが灯火の下で小刻みに震えている。ラクシュミー女神の生まれ変わりとさえ呼ばれる美貌は青ざめていてもなお、いや、尚更のこと美しい。それは我が兄嫁、サリーマだった。

「助けて、ラジェンドラ王
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