第十三話 心情
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た。
おそらくアイスの件を伝えたのだろう。現にそれ以降、扶桑も微笑んで吹雪を見ているし、吹雪も袖で顔を拭うこともなくなった。これなら演習は大丈夫だろう。
そして、海上を移動していた艦娘たちはやがて六人に分かれ、それぞれ対峙するように陣形を整えていく。
深海棲艦に唯一対抗できる存在ーーーー『艦娘』。先の大戦で沈んだ艦船の魂が乗り移ったと言われている彼女達であるが、その姿形は凰香達人間とそこまで変わらない。しかし金剛が言っていたように、彼女達には深海棲艦を屠り去る砲門があり、海の上を滑る様に走る艤装がある。それは、深海棲艦に歯が立たない人類の最後の希望と言ってもいいだろう。
そんな彼女達がどのように戦場を駆け巡るのか、誰しもが一度は見てみたいと思うモノだろう。
「僕達と皆では戦い方が違うから、参考になるかもしれないね」
時雨がそうつぶやく。事実凰香達と正規の艦娘とでは戦い方が大きく違うので、参考になるところは吸収するつもりでいる。
やがて、隊列が整った艦娘達は海の上で静かに佇む。もうすぐされるであろう、演習の合図を待っているのだ。
「そろそろですかね」
海上に揃った艦隊を見て、大淀がそう声を漏らす。そして手に持っていた書類を足元に置き、そばに置いてあった砲門を手に取って頭上に向けた。どうやら、彼女の砲撃が開始の合図のようだ。
「提督、危ないですから少し離れていてください」
大淀にそう諭され、凰香達は彼女から一定の距離を開ける。それを確認した大淀は凰香達から頭上に向ける砲門に視線を移し、空いた手で砲門を持った腕を押さえる。そして、大淀は砲門の引き金を引いた。
次の瞬間、ズドン!!と腹の底に響き渡る音が聞こえてきた。しかし、音とは裏腹に砲撃の衝撃は一向に凰香達に襲ってこない。
衝撃が襲ってこない理由は簡単だ。
すぐそばで、『砲撃がされていない』からだ。
何事かと目を向けると、そこには飛び降りんばかりに見張り台から身を乗り出している大淀。身を乗り出している彼女は顔を真っ青にさせながら倒れるのかと思うほど勢いよく仰け反り、次の瞬間耳をつんざくような声を上げた。
「て、敵機襲来!! 総員、直ちに建物内に避難してくださぁぁぁぁいっ!!!!」
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