346部分:第二十六話 聴かれたことその三
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第二十六話 聴かれたことその三
その椎名を見てだ。月美は笑顔で彼女に言った。
「おはよう、愛ちゃん」
「うん、つきぴー」
椎名も彼女に言葉を返す。
そして月美の傍に来てた。ぽつりと言った。
「白と黒」
「白と黒?」
「そう、白と黒」
それだというのである。
「今の二人の色は」
「あっ、そうね」
月美もここでわかったのだった。
「そうよね」
「そう、白と黒」
椎名は二人の服をそれぞれ見てまた話す。
「そういうことだから」
「何か白と黒ってお揃いみたいよね」
「狙ってなかったけれどいい感じ」
椎名はここでもぽつりとした口調で話す。二人は今駅前の柱のところにいる。平日なので周りには殆ど誰もいない。静かなものである。
その静かな中でだ。椎名はまた言うのだった。
「こういう感じが」
「そうよね。何かね」
「一緒にいて楽しい」
また言う椎名だった。
「こう対象的だと」
「私も。色は全然違う筈なのにね」
「お揃いの感じがして」
「チェスかな。それともオセロなのかしら」
月美はにこりと笑って言ってみせた。
「これって」
「若しくは天使と悪魔」
椎名はこうも言った。
「つきぴーが天使で」
「私がなの?」
「そう、そして私が悪魔」
こう言うのであった。
「エンジェルアンドデビル」
「愛ちゃんは悪魔じゃないけれど」
「ブラックデビル」
「ブラックデビルって?」
「昔明石屋さんまがやっていたやつ」
それだとだ。月美に話すのだった。
「私はそれ」
「それなの?」
「そう、今の私はそれ」
「愛ちゃん悪魔だったんだ」
「そしてつきぴーが天使」
彼女はそれだというのだ。こう月美に述べるのだ。
「それだから」
「ううん、私が天使って」
「ホワイトエンジェル」
椎名はまた言ってみせた。
「つきぴーはそれ」
「白い天使って」
「白い天使と黒い悪魔」
「それって何か」
「そういう意味で御揃い。御揃いはいい」
こんなことも言ってだった。椎名はそっと月美の手を握ってきた。椎名の左手と月美の右手がだ。ここで重なったのだった。
互いに温もりを感じてだ。月美の方から言ってきた。
「悪魔だけれど」
「うん」
「温かいね」
「そう、悪魔でも温かいもの」
「そうなの」
「心があるから」
それでだというのだ。
「だから温かいの」
「心があるから温かい」
「その通り。心がないと冷たくなる」
言葉が逆説になっていた。しかし同じ意味だった。
「そういうものだから」
「心がないと」
「つきぴーはとても温かい」
椎名は今度は月美の温かさを実際にその手に感じながら話した。それはもう秋だが夏の様にだ。熱いとまで感じるものだったのだ。
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