巻ノ百四十七 吉報その六
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「その武芸、次の戦でこそな」
「存分にですか」
「使ってもらうぞ」
「わかり申した」
父に確かな声で応えた、そしてだった。
大助は次の戦で思う存分これまで身に着けた武芸を使うことを約束した、その日の夜に。
幸村は己の屋敷に大助と十勇士以外に後藤と長曾我部、明石とこの度の戦に向かう者達だけでなくだ。
治房も呼んだ、それで酒を出してだった。
まずは治房にだ、こう言った。
「それがし達は必ず帰ってきますが」
「それでもですな」
「はい、帰らぬ時は」
「右大臣様、国松様を」
「お願いします」
こう頼むのだった。
「是非」
「はい、その時はです」
治房も幸村に確かな声で応えた、皆まだ杯も取っておらず真剣に話をして聞いている。
「それがし一命にかえて」
「お二方を」
「お護り致します」
「そうして頂けますか」
「必ずや」
「もうここには幕府は来ませぬが」
実は逃れたのをわかっていてあえて見て見ぬ振りをしているのだがこのことは今はあえて言わないのだった。
「しかし」
「それでもですな」
「はい、どうかです」
「承知しております」
是非にという返事だった。
「それがしは豊臣の臣ですから」
「だからですな」
「最後の最後まで豊臣の臣として」
「お護りします」
必ずというのだ。
「ですから」
「それがし達はですな」
「ご心配無用です、是非戦い」
「そのうえで」
「勝たれて下さい」
これが治房の言葉だった。
「そうされてそして」
「万が一もあれど」
「帰られて下され。帰られたら」
「その時は」
「祝いましょうぞ」
治房は自らこれをしようと言った。
「是非」
「そうして頂けますか」
「そう考えていますが」
「そうですか、実はそれは島津家の方々からも」
「言われていますか」
「はい、幕府には内密に」
その様にしてというのだ。
「お祝いをしようと」
「その様にですか」
「お話してもらっています」
「そうなのですか」
「勝った時は祝いが多そうですな」
「ですな、しかし勝ったなら」
それならというのだ。
「それだけのことがあるので」
「だからですな」
「それがしだけなく島津家の方々もです」
「祝いの宴を開こうと」
「言っておられるのでしょう」
まさにというのだ。
「その様に」
「左様ですか、では」
「はい、その時は」
「思う存分飲ませて頂きます」
「明日の朝が辛いまでに」
二日酔いになるまでにとだ、治房は幸村に笑って述べた。
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