巻ノ百四十七 吉報その四
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「それで大坂でも戦っていたが」
「それでもですか」
「ここに逃れて今の様にな」
「村人達によくしてもらい」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「考えが変わった、死ぬのは何時でも出来る」
「何時でもです」
「うむ、何処まで満足した武士として生き通せるか」
「そのことがですか」
「確かだと思う様になってな」
「それで、ですか」
「わしは死に場所を求めて戦うのではなく」
そうではなく、というのだ。
「武士としての道を歩む」
「そうした戦をですか」
「したい、これがおそらく最後の戦になるが」
「その戦において」
「わしは戦いな」
そうしてというのだ。
「生きる、そうしてじゃ」
「薩摩にですか」
「戻る、その後はな」
「どうするかはですか」
「わしが決める、ではな」
「薩摩に入って」
「それからあらためて話をしよう」
二人で話してだ、そのうえでだった。
大助は後藤と彼の家臣を薩摩まで案内した、後藤も健脚でそうしてだった。一行はすぐに薩摩に着いた。それから。
後藤はすぐに秀頼の前に来て頭を下げた、そのうえで彼に話した。
「それがしもです」
「うむ、無事であって何より」
「この通り、では」
「お主もじゃな」
「はい、一戦赴いて宜しいでしょうか」
「もう余は何も言うことはない」
秀頼は後藤に微笑んで答えた。
「そなたが好きにすることだ」
「それでは」
「うむ、そしてじゃが」
秀頼は後藤の家臣である長沢にも顔を向けて彼に声をかけた。
「お主が又兵衛を大宇陀までか」
「お連れしました」
「その功まことに大きい」
「有り難きお言葉」
「そなたのことは島津も聞いておる、島津家として藩士として召し抱えるとのことじゃ」
「藩士としてですか」
「うむ、その忠義に報いるとのことじゃ」
後藤へのそれにというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「これからも武士として正しくある様にな」
「そうさせて頂きます、して殿は」
長沢は後藤に顔を向けて己の主に問うた。
「どうされますか」
「わしか、戦に行ってからな」
「戻られた時は」
「何も考えておらぬ」
「そうですか」
「大助殿にもお話した通りな」
今はというのだ。
「考えておらぬわ」
「左様ですか」
「うむ、しかしな」
「まずはですか」
「戦を戦ってじゃ」
そしてというのだ。
「思う存分槍を振るってな」
「最後の戦に勝たれて」
「また薩摩に戻るからな」
「お待ちしております」
これが長沢の返事だった。
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