巻ノ百四十七 吉報その三
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「後藤様の様な立派な方をそうしては人としての道を外してしまいまする」
「そう思ってか」
「はい、村の者達は皆です」
「わしを匿い傷の手当てをしてくれたか」
「左様です」
まさにというのだ。
「そうさせて頂きました」
「そうであったか」
「左様であります、そしてですか」
「うむ、今よりここを発ってな」
「戦に赴かれますか」
「そうする、しかしそなた達にはな」
後藤はその顔をやや曇らせて長老に述べた。
「あえてな」
「あえてでしたか」
「別れは言わぬつもりであった」
「それは後藤様が、ですか」
「大坂方で戦った、幕府から見れば謀反人じゃ」
「その謀反人を匿ったと幕府に知られれば」
「そう思い挨拶をせずに去るつもりであったが」
後藤は長老に苦い顔のまま話した。
「そうであったが」
「はい、我等もそう思い」
それでとだ、長老も後藤に述べた。
「わしだけがです」
「見送りに来てくれたのじゃな」
「そうでした、お互いに思うことは同じでしたか」
「その様じゃな、しかしな」
「戦はですか」
「必ずじゃ」
まさにというのだ。
「勝つ、そしてな」
「生きられますか」
「そうする、ではな」
「これより」
「わしはわしの最後の戦に向かう」
こう長老に述べた。
「そうしてくる」
「はい、ではご武運を」
「村でのこと、忘れぬ」
二人で言葉を交えさせてだ、そしてだった。
後藤は長老と別れそうしてだった、大宇陀を後にして。
そのうえで薩摩への道中に入った、その中で大助は後藤に尋ねた。
「よいでしょうか」
「大宇陀でのことか」
「はい、後藤殿が村の者達に匿われたことは」
「わしを慕ってというのじゃな」
「はい」
こう後藤に言うのだった。
「だからです」
「わしの様な者をか」
「いえ、後藤殿だからです」
大助は道案内をしつつ後藤に答えた。
「だからこそです」
「そうなのか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「ああしてです」
「村の長老が村の者達を代表してか」
「来てくれたのです」
見送り、それにだ。
「そうしたのです」
「謀反人ではなくか」
「天下の豪傑として」
「そうであるか」
「ではです」
「うむ、わしはあの者達の心に応えねばならんな」
「駿府では共に戦いましょう」
後藤にこうも言った。
「是非、そして」
「勝ってじゃな」
「帰りましょう」
「わかった、わしはずっと死に場所を求めておった」
後藤は遠い目になり大助に述べた。
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