巻ノ百四十七 吉報その二
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「この通りじゃ」
「槍を振るえるまでにですな」
「戻ったわ、それでじゃ」
今度は後藤の方から言ってきた。
「貴殿がここに来られたのは」
「はい、右大臣様は無事に薩摩に入られました」
大助は後藤にこのことから話した。
「国松様も」
「そうか、ご無事であられるか」
「はい、長曾我部殿と明石殿もです」
二人もというのだ。
「ご無事で」
「薩摩にじゃな」
「おられます、そして父上と十勇士も」
「そうか、無事で何より」
「幸いにして」
「そしてじゃな」
「はい、そしてこの度それがしがここに来たのは」
「わかっておる、駿府にじゃな」
「そこまでおわかりですか」
「うむ」
後藤の返事は強いものだった。
「その通りじゃ」
「それでは」
「真田殿はもしやと思うが」
「はい、駿府に行く前にです」
「この大宇陀にか」
「寄られるとのことです」
「それには及ばぬ」
後藤は大助に笑って応えた。
「それではな」
「まさか」
「そのまさかじゃ、今よりここを発つ支度をする」
「そうしてですか」
「薩摩まで案内してくれるか」
こう大助に言うのだった。
「そしてな」
「その薩摩からですか」
「共に駿府に行きたい」
大助、ひいては幸村達とというのだ。
「そうしたいのじゃが」
「左様ですか」
「よいであろうか、道を案内してもらって」
「わかり申した」
大助は後藤が今の様に行ってくるとは思っていなかった、だが。
後藤自身がそう言うのならとだ、自身で断を下してそうしてだった。後藤にこう答えたのだった。
「薩摩まで案内致します」
「ではな」
こうしてだった、後藤は自分に大宇陀までついてきてくれている家臣と共にだった。
旅支度に入った、そうしてだった。
その家臣と共に大助に案内されて大宇陀を後にする時にだ、村の長老が彼のところに来てこう言ってきた。
「これよりですか」
「まさかと思うが」
「はい、村の者達皆では来られませんでしたが」
「そなたがか」
「村を代表してです」
そうしてというのだ。
「お見送りに」
「来てくれたか」
「はい、後藤様を村の者達で見送る代表に」
そうした代表でというのだ。
「参りました」
「済まぬな」
「後藤様が来られた時はです」
長老は後藤にその時のことから話した。
「まさかと思いました」
「あの時何故わしを幕府に突き出さなかったの」
後藤は長老に怪訝な顔で問うた。
「そうすればそなた達の手柄となったが」
「滅相もない」
長老は首を横に振って後藤に答えた。
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