第六幕その八
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「ドリトル先生ですね」
「はい、そうですが」
「私は八条大学で英語の講師をしているジョン=オーフェルという者ですが」
「ジョン=オーフェルさんですか」
「リバプール出身で今は日本に住んでいまして」
「この大学で、ですね」
「英語を教えています」
こう先生にお話するのでした。
「そして今もです」
「シェークスピアの朗読をですか」
「学生さん達と共にしていました」
「そうだったんですね」
「真夏の夜の夢の」
「日本語でしたが」
「はい、あの朗読は今度の舞台の練習の一環でした」
このこともお話するオーフェルさんでした。
「そうでした」
「左様でしたか」
「はい、そして」
「そして?」
「今度舞台で発表します」
その真夏の夜の夢をというのです。
「その予定です」
「では彼等は大学の演劇部ですか」
「そうです、そして私は演劇部の顧問もしています」
「そうだったのですか」
「実は英語劇の案もありました」
オーフェルさんはこのこともお話しました。
「ですがそれはです」
「されなかったのですか」
「色々な国の人やお子さんも舞台を観に来ると思いまして」
それでというのです。
「英語劇ではなく日本なので」
「日本語劇にされましたか」
「はい、それに」
さらにお話するオーフェルさんでした。
「素晴らしい日本語訳の作品があったので」
「福田恒存さんのですね」
「本当に素晴らしいです」
オーフェルさんは先生に確かなお声で答えました。
「あの人の訳は」
「だからですか」
「これもまたよしと思いまして」
それでというのです。
「この作品にしました」
「そうでしたか」
「それで上演はです」
「日本語の演技で」
「行いますので」
「ではその時は」
「先生も宜しければ」
オーフェルさんは先生にこうもお話しました。
「観に来られて下さい」
「わかりました、それでは」
先生も笑顔で応えます、そしてです。
オーフェルさんは先生にこんなことも言いました。
「しかし福田恒存さんは本当に素晴らしいですね」
「現代語訳だけでなくですね」
「はい、それにです」
「教養が凄いですね」
「考え方がしっかりしていますし」
「識見も備えていて」
「真の学者、知識人です」
そう思うというのです。
「あの人は」
「伊達に戦後日本の知識人ではないですね」
「こう言っては何ですが」
オーフェルさんは少し微妙なお顔になってこうも言いました。
「戦後日本最大の思想家と言われている人は」
「よくないですか」
「私の日本語への勉強がまだまだ足りないせいかも知れないですが」
それでもというのです。
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