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才能売り〜Is it really RIGHT choise?〜
Case1 後編
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アツシと、成功人生だけれどやりたいことを見失ったおれ。
 大好きだったサッカーを失って、代わりに成功人生を歩み始めたおれは今、最高に不幸せだ。
 大好きだったことを捨てず、代わりに失敗人生を歩んでいるアツシは今、最高に幸せそうなのに。
 そして、おれはついに気づいた。あの日、才能屋でおれが何を対価として払ってしまったのかに。
 おれは東大に受かれなくても、サッカーだけは、ストライカーの山本雪也だけは、捨てるべきではなかったんだ。だってそれこそがおれそのもの、おれがおれである証だったから。愚かだったあの頃では決してわからないことだった。あの頃は成功人生を歩むことしか頭になかった。だが違う! いくら成功人生を歩んだところで、心が貧しければ幸せなんてつかめようはずがない! 一見幸せそうに見えても、心からは幸せにはなれない! だから、だからおれはあの日あのときあの場所で、サッカーだけは、捨てるべきではなかったんだ!
 アツシを見て、おれは自分の中に広がった空白の正体に、ようやく気付いたのだった。夢喪失ワーカホリック。おれは夢を失って、働くことしかできなくなった! おれに趣味や生きがいはなくなったんだ! しかしいくら後悔しても、もう遅い。だからおれは、アツシに言った。
「そっか……それは良かったな、あっつん。でもおれはもうサッカーはやめたんだ。もうサッカーなんてできねぇよ。今のおれはストライカー山本雪也じゃねぇ。……働くことしか能がない、夢失った社畜だよ。夢喪失ワーカホリックだ、よ」
 おれのそんな暗い言葉に、アツシは目を丸くした。
「なんか……ゆっきー、変わったな、マジで」
「だからごめん、斎藤。おれはお前の誘いに乗れない」
 名前でなく、名字で呼んだのはわざとだ。
 おれがあのとき才能屋に来さえしなければ、きっとおれはアツシと、斎藤敦と楽しく笑いあうことができたのだろう。でも、無理なのだ。自分の出世のために自分そのものを捨てたおれには、無理なのだ。だから「あっつん」と呼ばずにあえて「斎藤」と呼んだ。それは訣別の意味を込めた言葉だ。
 アツシは呆気にとられたような顔をしていた。おれはそんなかつての友人に、畳み掛けるように言葉を投げる。
「おれは歩く道を間違えたんだよ。東大に受かったからって、趣味を失って何が幸せなんだよ。……そんなわけで、ごめん」
 謝って、おれは足早にその場を去る。驚いた顔のアツシが残された。
「あっつん……」
 こいつと一緒にいると、胸が苦しくなる。
 こいつはおれが捨てたものを、全て持ったまま幸せに生きているから。
 貧乏でも、フリーターでも、こいつは確かに幸せだった。
 エリートで、金持ちなおれが不幸せなのと対照的に。
 ああ、才能屋よ、今も覚えている外道坂灯よ。あなたはわかっていたんだな? おれがいつ
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