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才能売り〜Is it really RIGHT choise?〜
Case1 後編
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おれはあえてそこを考えないようにした。だって信じたくなかったんだよ、勉学の代わりに失ったものの大きさが、思っていたよりもずっとずっと大きかったってことを。
そしておれはいつしか、大人になった。
行った大学は東大だ。そこでのトップ10なんだ、十分に誇っていいだろう。それでもおれは、心にぽっかりと空いた空白を無視することはできなかった。おれは満ち足りていたのかもしれないけれど、同時にどこかが欠けていた。おれはサッカー以外の趣味を見つけられなくて、勉学に励み、働くしか能がないワーカホリックになってしまったんだ。
そんなある日、おれは中学時代からの友人に出会った。
「おい、おい! そこにいるのユキヤだよな? ホントにホントにユキヤだよな? ゆっきーだよな?」
掛けられた、声。その声の調子と「ゆっきー」というあだ名に、おれの記憶が猛反応する。
おれは恐る恐るその名を呟いた。
「……アツシ?」
「そーだよそーだよ、あっつんだよ! うっひょお、ゆっきーインテリ系? 変わったなぁ!」
「アツシは、変わってないな、ちっとも」
「そこはアツシじゃなくてあっつんでしょ! あっつんって呼べよゆっきー!」
言いながら、ばんばんおれの肩を叩いてくるアツシ――あっつん。
中学時代から明るく騒がしく太陽みたいだったコイツは、ちっとも変わってはいなかった。
アツシは、あっつんは、言う。
「そーだそーだ、そう言えば、ストライカーさんよぉ、山本雪也さんよぉ。せっかくこうやって再会したんだしさぁ、みんな呼んでサッカーやってみねぇ? おれ、ゆっきーシュート見てみたいわー、また!」
その言葉を聞いて、おれの身体は固まった。
サッカー。ストライカー。ゆっきーシュート。暑い夏の芝草の上、駆ける無数のサッカーシューズ。
その全て、おれの好きだったことすべて、おれは勉学の才と引き換えに捨て去ってしまったんだ。
おれはアツシに訊いてみた。
「……なぁ、アツ……あっつん。お前、今、何しているんだ?」
アツシはおれのそんな質問にきょとんとした顔をすると、ああ、と頷いて喋りだす。
「おれさまは今、絶賛フリーター中でっす!」
「……は?」
アツシは明るく、言うのだ。
「それでも今、たのしーよ。フリーターだけんど、やりたいことはできているんだからなぁ! リアルで充実してまっす! 彼女いないけどおれさまはリア充な!」
人生は失敗したのかもしれないけれど。
好きなことを好きなようにやっているアツシは、とてもとても幸せそうに見えた。
人生は成功したのかもしれないけれど。
好きなことを見失ってワーカホリックになってしまったおれとは、まるで違う生き方。
どっちが幸せなのだろうか。貧乏でも、失敗人生でも、好きなことを好きなようにやれる
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