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大阪のつらら女
第三章

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「このお部屋かなり」
「寒いですか」
「この寒さは」
「いえ、私この温度でないと」
「駄目なんですか」
「長い時間いられないんです」
 こう晶子に言うのだった。
「ですから」
「この温度にしているんですか」
「お家中を。あまりに暑いと」
 氷上さんは晶子にさらに話した。
「辛いので」
「辛いんですか」
「溶けないですが」
「溶けない?」
「あっ、何でもないです」
 氷上さんは晶子の突っ込みに慌てた口調になって返した。
「別に」
「そうですか」
「お気になさらずに。ただアイスキャンデーは」
 氷上さんは晶子から受け取ったそれの話もしてきた。
「本当に有り難うございます」
「いえ、水饅頭のお礼ですから」
「だからですか」
「お互い様ということで」
「それじゃあ」
「召し上がって下さい」
「そうさせてもらいます」
 氷上さんは笑顔で応えた、そしてだった。
 晶子と彼女と一緒にいる真奈も見送ったがだ、家から出ようとしなかった。そしてその彼女と別れて晶子の家に戻ってだ。
 真奈は晶子にだ、こう言った。
「あの」
「あのって?」
「あの人多分ね」
 考える顔でだ、真奈は晶子に話した。
「普通の人じゃないわよ」
「あの寒いお家の中は」
「ええ、しかもペンネーム氷柱でしょ」
「それがどうかしたの?」
「つららじゃない」
 平仮名で読むと、というのだ。
「要するに」
「それがどうしたの?」
「だから。あの寒いお家の中に夏はずっといるのよね」
「夜に出てるかもね」
「それどう見ても只の暑がりじゃなくてね」 
 晶子が考えている様にだ。
「別よ、人間じゃなくてね」
「じゃあ何だっていうのよ」
「私の勘だと妖怪よ」
 人間でなく、というのだ。
「つらら女っていうね」
「まさか」
「いえ、だって夏お家に滅多に出なくてあの寒さだったら」
「あの人はなの」
「普通の人じゃなくてね」
「妖怪だっていうのね」
「そうじゃないの?溶けるとかも言ってたし」
 真奈はこのことも聞き逃していなかった。
「だからね」
「人間じゃなかったの、あの人」
「そう思ったけれど」
「まさか。いい人だし」
「別に妖怪でもいい妖怪と悪い妖怪いるでしょ」
「あっ、ゲゲゲとかだとね」
「人間でもそうだし。だからね」
 例え妖怪でも心根がいいことはというのだ。
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