第三章
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「このことに」
「よいことだ」
父王は彼に笑みで応えた、彼にしても自身の弟と王位を争ってきたし今も彼が息子と王位を争っているのを知っている、それで決断は決まっていたのだ。これで王弟を黙らせて王位継承争いが終わるならだ。
「その結婚を許そう」
「私も同じです」
王妃も同じ考えでありこう言った。
「それではですね」
「はい、式の用意を進めましょう、ではだ」
マツリカは王弟以外の王族や廷臣達にも言った。
「そなた達には式の用意をしてもらう」
「御意」
「それでは」
彼に近い廷臣達も応えた、ただ王弟と彼の周りの者達だけが歯噛みしていた。
マツリカと王弟の娘の婚約は国中に広まり式の用意も進められていった、彼はその中で会心の笑みで言った。
「これでだ」
「はい、もうですね」
「王弟殿下は動けないですね」
「政略結婚で取り込まれたので」
「それも娘殿が」
「実は私達はだ」
マツリカはここで種明かしをした。
「従兄妹同士だったがな」
「それでもだったのですか」
「お二人は」
「既に」
「それで婚約者ともな」
マツリカ自身にも事情があってというのだ。
「そうだった、そして今だ」
「婚約をされて」
「そうしてですね」
「将来の王妃様とされて」
「王弟殿下をですね」
「王になっても一代では意味がない」
マツリカはこの現実を指摘した。
「そうだな」
「はい、子孫に王位を伝えねば」
「一代では意味がありません」
「王は血です」
「血でなるものですから」
「その血を取り込むのだ」
即ち彼の娘をというのだ。
「ではどうしようもなくなるな」
「殿下がそうされれば」
「政敵であられる殿下が」
「これでもう叔父上は只の軍人だ」
そうした存在に過ぎなくなったというのだ。
「精々義父上と呼ばせて頂こう」
「そうしてですね」
「絶え間ない屈辱を与える」
マツリカは嗜虐的な笑みを浮かべて言った。
「そうしていこう」
「それがあの方への報いですね」
「これまでのことに対する」
「そうなのですね」
「そうする、しかし彼女はな」
妻となる王弟の娘、彼にとっては従姉妹になる彼女のことはこう言うのだった。
「実にいい女性だ、尊敬出来るまでにな」
「だからですね」
「あの方は純粋に愛していかれる」
「そうされるのですね」
「そうする」
こう言って実際にだった、彼は妻となった彼女は愛した。そうして二人の間に最初に生まれた愛息を王弟である叔父に見せたが。
叔父は彼には怒りに満ちた真っ赤な顔を見せた、しかし彼と娘の間に生まれたその赤子に対しては笑顔を向けた。マツリカはそれを見て満足した笑みを彼の妻の横で浮かべた。
玉座と血 完
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