暁 〜小説投稿サイト〜
ヌードデッサン実技がある美大の入試
ヌードが描けないなら、美大はあきらめなさい。
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三日空けて、2回目のヌード。

ようやく、少年の目が裸の私を見た。
美大を志望する者のプライドだろう。

「今日はどんなポーズ?」。
やはり返事はなかった。

──それなら、寝ポーズでいこう。
それは、お尻丸見えのうつぶせで、片足を曲げるポーズ。
自慢のヒップラインよ。

ついに、思いきったように少年が口を開いた。
「ごめんなさい。なんとか見ることはできるんですけど、描けないんです」
▼▼
──寝ポーズのまま、カウンセリングした。

実は、少年には彼女がいた。
クラスは違うが同級生だというその娘とは、親公認の、清い交際だったということを。(キスはしたそうだが)

少年は語った。
裸体コンプレックスは、その少女の裸身を異常な形で見てしまったのが原因なのだという。


高校2年の、夏祭りの花火大会。
家族公認の彼女は、少年の家で夕食をすませ、浴衣デートすることになっていた。

浴衣の着付けは少年の母がしてくれた。
閉めきった客間での身支度。
はしゃぐ声が漏れてくると思いきや、ふすまの向こう側は静まりかえった──

少年は、その静寂をとてつもなく不思議なことだと感じた。
ついに我慢できず、ふすまの隙間から覗いてしまった少年が一瞬だけ見たものは──素っ裸にされた少女の後ろ姿だった。

たちまち、気づいた少女は悲鳴をあげ──彼女は泣き出し、デートは中止。そのまま別れとなった。
▼▼
「ふーん」

本格的な着付けだったのね。
普通ならショーツまでは脱がずに、専用のスリップの上に浴衣だけど。

彼女も恋人にハダカ見られたぐらいで──どんな気持ちで付き合ってたんだろ。

とりあえず、そのことで女性の裸がトラウマになったか。
古き良き時代の少年漫画みたいだな。
もっと仲良くなって、彼女が笑顔でヌードになったところを、描きたかったんだろうな。

それでも、裸を見るぐらいはできるというなら、なんとかなりそうね。
▼▼
とりあえず、着付けのヌードシーンを再現した。

お尻丸出しの直立か──恥ずかしいな。

「描きなさいよ」

命令口調で言ってみる。

そして、思索してみる。

裸を見られて悲鳴をあげた少女ではあるが、
芸術を志す少年を恋人に選んだからには、ヌードの覚悟はできていたと思う。

それでも、いざ裸を見られて悲鳴をあげたのは、彼が覗くような人間だったという事実を受け止められなかったからに違いない。

彼が、もう少しうまく立ち回っていたら──もったいなくて仕方がない。

ともあれ、この日ようやく最初のヌード画が描けた。
カウンセリングの効果だ。

一枚描ければ、あとはラクだった
通算5回のレッスンで、少年は臆せずにヌードを描けるよ
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