暁 〜小説投稿サイト〜
才能売り〜Is it really RIGHT choise?〜
Case1 夢喪失ワーカホリック
Case1 前編
[4/4]
[9]
前
最初
[2]
次話
みてくれないかい?」
灯さんの指示に従い、おれはいつもの練習通りにボールを軽く蹴りあげて頭の上で……
リフティング、できなかった。
それ以前。おれの蹴りあげた足は見事に空を切って、バランスを崩したおれはたたらを踏んで大きくよろけた。おれは愕然とした。
リフティングだぜ? 練習みたいな動きだぜ? できて当然の動きなんだぜ? これでもおれはストライカーだったんだ、リフティングはそれなりにうまかった。
それなのに、できない。できないどころか大いに空振ってよろけてしまった。
このストライカーの山本雪也が。
おれはリフティング以外の動作もやってみようと動いてみた。しかし、慣れた動きを頭の中で思い返すことはできても、身体が動かなかった。おれは固まったまま動けなかった。
おれはしっかりと理解する。
「……これが、代償か」
「代償というよりは対価だね」
おれの言葉に灯さんは律義に返す。
「わかったかい? 君は勉学の才を手に入れてサッカーの才を失った。得た才をどのように使うのかは君次第。でも、いくら努力したって失われた才は戻らない。それが才能屋の取引なのさ」
「……わかり、ました」
おれはしばらく呆けたような顔をしていた。得たものと失ったもの。合格の可能性が見えてきた大学受験、永遠に戻らないストライカー。おれの未来とおれの過去。未来の栄光と過去の栄光。
得たものの大きさも、失ったものの大きさも同じだと灯さんは言う。それでもどこかで、ストライカーでなくなった自分を惜しいと思っている自分がいた。
「ありがとう、ございました」
複雑な思い。もやもやした何かを抱えながらもおれは灯さんに礼をして、逃げるように店を去った。
どうしてだろう、おれの未来は確約されたはずなのに、胸にぽっかりと大きな穴が空いたような気がして、それがおれの心を鬱にさせた。
[9]
前
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ