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才能売り〜Is it really RIGHT choise?〜
Case1 夢喪失ワーカホリック
Case1 前編
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れは立ち止まった。
「それでは始めるよ……。最後にもう一度確認だ。君が望むのは勉学の才で、代わりに君がくれるのはサッカーの才だね。合ってるかい?」
「ああ、合ってる」
 おれが肯定すると、灯さんは真剣な顔をして、おれの額に手を当てた。おれの身体が硬直すると、「そのまま」と鋭い声が飛ぶ。なんだかよくわからない感覚が全身を吹き荒れ、おれは金縛りにあったみたいに動くことができなくなった。灯さんの顔もとても真剣だった。ああ、とおれは理解した。今この瞬間、平凡な日常では決して体験することができない超常的な何かが起こっているのだと。だってそうでなければ、「才能を交換する」なんてことが説明できるわけがないだろ? 才能っていうのはその人に固有のもので、交換できるような代物じゃあないんだから。
 そして時間が過ぎる。おれにとってこの緊張に満ちた時間はまるで永遠のようにも感じられたが、時間はあまり経っていなかったらしい。
「終わったよ。じゃあ早速質問さ。えーと……7、3、7、3と四則演算子(+−×÷)を使って24を作ってみて?」
 は? そんなわけのわからない難しい問題、このおれに解けるわけがないだろ! おれは内心で憤慨したけれど。
「……え? どうして?」
 気が付いたらおれの頭は、勝手に演算を開始していた。分数を使えばうまくいくか? 単純計算じゃ絶対に無理だ。出されている数字をこう使えば……。
 そしておれは答えを出した。……答えを出せた。
 おれは自分に驚きながらも、導いた答えを口にする。
「……(7分の3+3)×7」
「お見事さん」
 パチパチと、乾いた拍手の音。
 おれは驚いていた。本気で驚いていた。ここに来る前のおれならば絶対に解けていない、解く方法の糸口すらわからなかっただろう難問。それを短時間で解けた、おれ。その事実は、紛れもなく才能の交換が行われたことを示していた。
「じゃ、君の払った代償についても検証しようか」
 そんなことを灯さんが言いだした。灯さんは身体の向きを変えると、店の奥に「ウツロ、検証。サッカーボール持ってきて」と声を掛けた。そのすぐ後に、店の奥からサッカーボールが飛んでくる。動けない灯さんはそれを捕まえられないから、おれは自分の方に転がってきたサッカーボールを拾い上げた。灯さんは店の奥に文句を言った。
「ウツロ? あのさ、僕が上手く動けないの知ってるよね!?」
 店の奥に反応はない。おれは苦笑しつつも、拾い上げたサッカーボールをまじまじと見つめた。
 そしておれはさらなる驚きに包まれる。
「サッカーボールが、重い、だって?」
 これまでは、風のように軽く感じていたサッカーボール。しかし今おれが持っている、どう見てもサッカーボールとしか思えないこれは、何故か重く感じられたのだ。
「それ、リフティングして
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