第3章 リーザス陥落
第110話 魔王の元へ
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アイゼルの話を訊いて、ユーリは少し考えた後、薄く笑った。
「オレとホーネットの関係、か。改めて口にするのは、……話すのには時間が無さすぎるな。短い時間で語れる程、彼女とは浅い関係ではない。……それに気になるのなら、寧ろオレより彼女に訊いてみると良い。………生きて、ホーネットの元で。……ふふ。だが 彼女が簡単に教えるとは思えないぞ。その辺りは保証しない。例え、オレが答えても良いと言っていた、と言ってもな」
ユーリは そう言うとアイゼルに背を向けた。
「関係について今言えるのはそれだけだ。……それと、この先、どうするもアイゼルの。お前達の勝手だ。魔王側に付こうと、人間側に付こうと、オレの、……オレ達のする事は変わらん。……ただ、戦うだけだ。勝つ事と、仲間を信じてな。アイゼルたちは元々敵側だ。乱入等の備えはしているつもりだ。……仮にこちら側に来たとしたら 無用な混乱を生むかもしれない。……が、オレの仲間達はそのくらいで乱れるほどヤワではない」
アイゼルはその背を見て思った。
人間と言う存在、その脆さはよく知っている。どれだけの屍を築いてきたか 判らぬ程の凄惨な時代も観てきた。その中で際立つのは醜さだった。何度も何度も見てきていた。
だが、この戦争でその考えが180度変わったと言っていい。たった数日。悠久の時を生きる魔人が、閃光の様に一瞬で終わる様な時間で 考えが変わった。
そして次に思うのはホーネットの事だ。
彼女が人間との共存を選んだ理由、それは『あくまで先代魔王ガイの意思』であり、それ以上でもそれ以下でもなく、ただただその遺志を継ぎ遂行する事のみを考えていると言っていた。
アイゼルは それが虚実であるとは思う訳もない。それも真実だろう。だが――それ以外にもあるのではないか? と この時に朧げにではあるが確かに見えた気がした。
「(……そう、でした。ホーネット様)」
記憶の深奥。普段であれば決して深く考える事の無い一場面。その光景が鮮明に頭の中へと蘇ってくる。
「(……確かにありました。ホーネット様が、貴女が変わったと思う瞬間があったのを……。そう、あれはいつのことでしたか………)」
アイゼルは記憶。その中のホーネットが確かに変わったのだ。様子が変わった時期が確かにあった。
毅然とした仕草、その凛とした佇まい。反射的に首を垂れ傅く事を一切厭わない。誰もが崇め奉る美しさ。半分人の血が流れていると言うのに、圧倒的な強さを持ち、更にその美しさは類を見ない。常々アイゼルは感じていた事だ。
そんな彼女の表情が、綻びを見せる事があったのだ。
ホーネットの側近である魔人サテラは勿論、同じく側近である魔人四天王のシルキ
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