第3章 リーザス陥落
第110話 魔王の元へ
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アイゼルは呟き続ける。
そんな時だ。背後から声が聞こえたのは。
「……そんなの決まってるじゃない」
驚くべき事に、いつの間にか背後をとられていたのだ。声を聴くまで判らなかった。
そう、それ程までに アイゼルは周りが見えていなかったと言える。
「アイツは、ユーリだから。それだけで十分。それ以上は要らない。それだけで良い」
「………志津香、さん」
背後に立っていたのは、魔想志津香。ユーリ・ローランドと同じく、アイゼルが心を奪われた人間。
「自分が傷つく事なんか二の次。倒れる事だって関係ない。……死さえ、ユウにとっては関係ない。死ぬ最後の瞬間もきっと戦ってる。いや、例え死んでも、きっと止まらない。私はそう思えるから。そんな男だから、ユウは誰よりも強い。……それに、誰よりも優しい」
此処で初めてアイゼルは志津香の目を見た。
その眼の光は、やはり強く美しい。……そして 何よりも慈愛に満ちていた。そう、向けられているのはあの男だろう。惹かれに惹かれた眼が映すのはユーリと言う男だけだ。
そして、一瞬ではあるが、あの時のホーネットの瞳とかぶって見えた。
「……ふふ。そう、ですね。全てはユーリと言う男だから。確かにそれ以上の理由は無いかもしれません。それに、とても説得力があると感じてしまいますよ。……貴女方を知った者からすれば、これ以上ない」
「……でしょ? 難しく考える事なんて無いの。アイツだから。それだけで良い。それだけ頭に入れておけば良い」
志津香はそう言って笑うと、ユーリと同じ様にアイゼルに背を向けた。
「……全部話を訊いた訳じゃ無いけど、アンタが私達に付くとか付かないとかの話をしてた、って言うのは判る。……後、状況を見たら、きっとユウが その子達を助けたって言うのもね」
志津香が言うのはアイゼルの後ろにいるのは宝石3姉妹の使徒たちの事だ。
嗅いだことのある不快な臭い。……鼻に付く異臭。そして 元々殆ど露出してた衣服なのに、更に乱暴に引き裂かれていて怪我も多数負っている。
そして――夥しい血。
それは人間のものであると言うのは判る。傍らに横たわっている首なし死体を見れば尚更。
魔人が人間を殺したかもしれないが、志津香にはこれはユーリがやった事だと直感的に判った。そして 敵である筈の使徒を助けたと言うのも。
「私もアイツと同じ意見。どっちに付いても関係ない。私たちがする事は変わらない。……最後の最後まで戦う。アンタとも、魔王とも。アイツ……ユウの傍で」
「……羨ましい関係です、ね。志津香さん。……そう、ですか」
アイゼルは頷くと、まだ倒れている使徒たちを抱き抱えた。
「私も……私がすべきことをしようと思います。少々曇っていた
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