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ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第110話 魔王の元へ
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ィと魔人ラ・ハウゼルも驚いた程だった。

 驚くとは失礼かもしれない。ホーネットとて、笑う時だってある。穏やかな表情をする時だってある。……いや、サテラ達は何度も見た事がある。だが、この表情は誰も見た事がない部類のものだと言えるのだから。そう、思えた。
 何かを信頼している部下や仲間達に向ける視線や表情も柔らかい時だってある。だけど、何処か違った。
 
 それは 慈しむ様な……いや――違う。誰もが口にせず、否 頭で考えさえしない様にしていたが、それは恋する乙女の様な そんな表情だった。
 それに気づかなかったのは 恐らくあの場ではサテラだけだろう。

 恐らくなにかがあったのだろう。きっと、ユーリと言う男と。
 正直、魔物界に人間がただ1人、と言うのは 俄かに信じがたい、がこの人間の強さを目の当たりにしたら、そう言った常識は通用しない。歴史上においても魔物界を闊歩したと言う事例は、アイゼルの中では僅か1件ではあるがあったと記憶している。

 だが、判らない所も当然ある。

 仮になにかがあったとして……、それでもホーネットは、確かに上位に位置する魔人。だがそれでも、何処まで行こうが魔人の領域を超えたりはしない。
 
 その更に上位に位置するのが魔王と言う存在。隔たる壁は天にも届く程であり、超える事はおろか、立ち向かう気さえ失せてしまうのが普通の筈なのだ。だが、ユーリと言う男は歩みを止めたりはしない。ただ、前へと進み続けるのみだった。

「………やはり判らないですね。何故貴方はそこまで強くいられるのかが。強い(・・)、もう、ただその言葉だけでは現す事が出来ません。……貴方の事は」

 この戦はリーザスの解放が目的だった筈だが、最早それは変わった。
 
 行き着く先、向かう先にあるのが魔王の討伐であり、そこが終着点だと言える。
 だが、人間の歴史上においても、魔王を倒せた人間はいない。唯一、倒す事が出来た、殺し、封じる事が出来たのが先代魔王ガイだった。だが、それは人ではなく魔人に、魔人筆頭となり力を得たガイだ。カオスを携え、魔王を封じた。そう……もはやガイは人間ではない。

「何故、怯む事なく……。足を止める事もなく、向かっていけるのですか………? アレ(・・)を、間近で感じて尚……」

 魔王ジルが封印から解かれた時。
 離れていたのにも関わらず、圧倒的な力を、力の差を感じた。立ち向かう等出来る筈もない途方もない差を。
 なのにも関わらず、ユーリと言う男は歩みを止める気配など微塵も無かった。絶対的な恐怖を、死地を前に、迷う事なく飛び込んだ。

「……人類の、為。……仲間の為、絶対的な死地へ 足を踏み入れる事も厭わない。……なぜ、どう、して そこまで……?」

 ユーリの背が見えなくなった今でも
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