彼と彼女の出会い 後編
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女性が電話を切り、奏輝の方に笑顔で歩み寄ってくる。
「君、怪我は大丈夫? まだ痛いでしょ?」
「……このくらいなら……」
明らかに無理をしている声で対応するが、女性は一度だけ「ふーん」と全てを見透かした目をしてからまた笑顔に戻る。
「強いね。君がユナちゃんを彼処まで守ってくれて本当によかったよ」
ユナちゃん、それが自分が守ると誓って最後に手放した少女の名前だと奏輝は理解した。
「あの子は……大丈夫だったんですか? 怪我は? 泣いたりしてませんか?」
そして、奏輝は少女の事が心配になり矢継ぎ早に質問する。「まぁまぁ」と落ち着かせられて奏輝は掴んでいた女性の腕を離す。
「えっとね、無事だよ。でも怪我は少ししたかな。あの子運悪いから転んじゃってね。あとは君が大怪我したのは自分のせいだって泣いてたかな」
「そう、ですか……」
本当は、もっと上手くやれたんじゃないか? 奏輝はそう後悔しながら女性の話を聞いた。
「どうする? 会っていく? あの子は君に会いたいみたいだけど……」
その女性の追いかけに、奏輝は少し考えて結論を出す。
「俺は────────」
────────────────
「あの時、俺は自分を責めていました。幸奈さんに会わせる顔が無いと、幸奈さんに自分の怪我を見せて泣いてほしくないと。だから、俺は……」
そう言う奏輝に幸奈は思い切り抱き着いた。奏輝は拒絶せず、静かに抱き締める。
「奏輝君の……ばか……私は、あの時……あなたに会いたかった。会って、謝って、お礼を言って、名前を聞いて、す、好きって伝えようと思ってたのに……私のせいで怪我をしたことを、怒って居なくなったと思った……」
あの時と同じように、奏輝は「はい」と幸奈の言葉に返事をする。幸奈は一旦離れて奏輝の目を見る。
「改めて言わせて……奏輝君。あの時、私を助けてくれてありがとう。私のせいで大怪我をさせてしまってごめんなさい」
「俺も、あの時……幸奈さんの事を考えたフリをして、逃げてすみませんでした」
二人はお互いに謝り、出会いの思い出を共有した。生まれたのは更なる絆と微笑ましい過去だった。二人は抱き合い、自然と笑顔になっていた。
───奏輝君、私を幸せ者にしてくれてありがとう。
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