彼と彼女の出会い 後編
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ような男に頭突きをかます。当然、小学生がボディーガード風の男に勝てる訳が無いが……突然の出来事に対応できないのは子供も大人も同じだ。
「行くんだ! 早く!!」
奏輝は大声で叫ぶ。少女は「ごめんなさい!!」と言って逃げるように走り出す。頭突きは虚を突いたのが功を奏したのか、運よく鳩尾を捉えた。
「ぐっ……このガキがぁ!!」
「──っ!!?」
しかし、その程度では大人を倒すことは出来ず、振りかぶられた拳に吹き飛ばされる。
痛みが走る。肺の中の酸素が一気に吐き出され、咳き込む。勝てる訳がない。もし、奏輝が何か武道を習っていたら、筋肉が特別製だったら、物語の主人公だったら、ジャイアントリキングを果たしていただろう。だが、現実は甘くない。そんなことは奏輝がもっとも理解していた。
「それでも!」
それでも、奏輝は約束したのだ。守ると、連れて行くと、約束したのだ。
「うるせぇなぁ……オマケが喚くな、よ!」
今度は蹴りで吹き飛ばされる。勢い良く吹き飛ばされた身体は壁に当たることで止まり、力なくズルズルと床に投げ出された。
「それにさぁ、あんな子だけで逃げられるわけないじゃん。今頃つかまってるだろうなぁ」
そんなことは、奏輝も理解している。だからこの男を倒して追いかけなければならないのだ。あの笑顔が眩しくて純粋な、天使のような名前すら知らない女の子を。
「ああ!!」
奏輝は結んだロープを勢い良く振り回す。先端を何回か巻き付けた為、こけおどしではあるが当たると少しは痛いだろう。
「遊びは終わりなんだよ!!」
突撃してくる男に対して奏輝はロープを投げつける。「うわっ」と歩みを止めて隙が生まれた男に対して奏輝は逆転の一手を模索する。
人間の弱点は先程打った鳩尾、目、耳、鼻、口、関節、そして男女問わず確実に倒すことができて男性には特に効果抜群な────
「潰れろぉぉ!!」
股間を思い切り蹴り上げた。「うごぉ!?」と奇声を上げる。それでも、まだ倒れていない。一発、二発と追撃の蹴り上げをかますと男は白目を剥いて倒れた。
「行くんだ……助けに……」
倒れた男の横を通り、足を引きずりながら奏輝は向かう。守ると誓った少女の元へ。
だが、数歩進んだところで奏輝は崩れるように倒れた。二発だけとは言えど大人の訓練を積んだ男の攻撃を喰らったのだ。普通の子供はここで限界を迎えるのが常だろう。
「────頑張ったね。偉いぞ男の子」
奏輝は薄れ行く意識の中で、安心できるその声に包まれて目を閉じた。
意識が戻る。痛みでいっぱいの身体を動かすと、少女……によく似た大人っぽい女性が「キリナギのー」や「ユナちゃんがー」や「男の子がー」と話している。
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