彼と彼女の出会い 後編
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したら、小さな声で喋ること。暴れないこと。これを守って」
うん、うんと少女は頷き奏輝は「待ってて」と言ってロープを外す。その次にガムテープを剥がした。
──なんで、誘拐なのにこんなにロープの縛りかたが甘いんだろう。しかも余裕で机や椅子も置いてあるし。
「ど、どうしよう……わ、私たち、ゆうかい……」
「うん。でも、逃げ道はあるから大丈夫。こっち来て」
「う、うん……」
また涙目になってしまった少女の手を引いて奏輝は二人で椅子の上に立つ。
「俺は一人で登れるから、最初は君だよ。肩車するからね」
「うん……」
奏輝は少女を肩車で上げる。予想外の軽さに驚きながらも少女の小さな両手は通気孔の柵を外す。その後、しっかりと登る。
それに続いて奏輝も簡単に登って一息付く。中は暗く、緊張と不安を駆り立てる。実際、少女は怯えたような表情で奏輝の手をぎゅっと握っている。
「大丈夫だよ」
繰り返し、安心させるように、優しく奏輝は語りかける。
「俺が君を守ってみせるから、安心して」
頭を撫でると笑顔になり、「うん!」と元気な声を出す。奏輝も少女の笑顔を見ることで安心し、何かあった時の為にロープを四本結んで、腕に巻きつけて進み始める。
順調に進んで行くと背後から少女が話しかけてきた。
「ね、なんか……物語の登場人物になったみたいだね?」
「うん、誘拐なんて話の中だと思ってたよ」
不安にさせないように、奏輝は少女の言葉に向き合って会話を進める。
「あなたが主人公で、私がヒロイン……素敵じゃない?」
「初めて会ったのに?」
「ほら……ひ、一目惚れって……あるでしょ?」
少女の声は小さくなったものの奏輝の耳にはちゃんと届いていた。
こんな女子から告白されたことのない自分に一目惚れって……と思っていたが、これが姉の言う「吊り橋効果」というものだと納得した。
少女を冷たい考えで突き放す事は、したくないと考えてただ少女の問いに頷くだけだった。
進んで行くと、光が漏れた所に辿り着いた。ここがゴールだと奏輝は感じとり、柵を外そうとする。その前に少女の方を振り返り、真剣な眼差しで語りかける。
「……もし、ここから先……俺が居なくなっても決して止まらないで。後ろは振り向かないで」
「どうして……? 守ってくれるって……」
「守るために、俺は止まるかもしれない。でも、君が止まっちゃいけないんだ」
キョトンとした少女に優しく奏輝は語りかける。返答を聞かずに奏輝は柵を外して外に出る。
「楽しかったか? 残念だけど、ここで終わりだ」
──やっぱり、居た。ならばすることはただ一つ。
「ああぁぁぁぁ!!!」
勢いを付けて奏輝は目の前の山の
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