彼と彼女の出会い 後編
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、一番可愛いよ」
それに対して彼は裏切ることは出来ず、反対側に顔を向けてそう答えた。事実、奏輝はその少女の一挙一動、笑顔、泣き顔、怒り顔、が可愛らしいと思っていた。
「一番……えへへぇ……ありがとう!」
少女は奏輝にぎゅっと抱きついた。暫くは嬉しそうに、抱きついたまま二人は歩いていた。
駅まであと少し、というところで軽自動車が二人の目の前に停車した。中から一人の黒服の男性が降りてきて少女に向かって一礼する。
「お嬢様、お迎えに上がりました」
低く重い声の男性に奏輝は後退るが、横に立っている少女は知り合いを見つけたかのような表情で話しかける。
「海遊さん? 今日は私とお姉ちゃんの二人でお出掛けだから送り迎えはいらないって……」
「ええ、しかしお姉様から連絡があり、お嬢様が迷子になったと……なので探して、お迎えに来ました」
「そうなんだ! お姉ちゃんに迷惑かけちゃった……」
──嘘だ。この人の言っていることは嘘だ。
奏輝は何故かそう確信できた。そしてこの男は危険だと、逃げろと、警鐘を鳴らしていた。
「あっ──」
何か言わなければ──しかし声は出ず、男性に遮られた。
「さぁ、行きましょう、お嬢様」
「うん! あ、この子も連れていっていい? お礼がしたいの!」
少女が安心しきった笑顔で男性に話す。男性は少し渋ったが了承して少女を乗せた後に奏輝も車へ案内する。
「あの……俺───」
遠慮しようとした所で奏輝はそれ以上何か言うのを止めた。ここで、もし自分が彼女と別れたら? 自分の予想が合っていれば彼女は誘拐されるだろう。そして寂しい思いもして、トラウマを抱えてしまうだろう。
──それに、連れていくと約束した。
「どうしたんだい?」
「いえ……お願い、します……」
奏輝は軽自動車の後部座席に座り、隣は「えへへ」と少女が笑っている。
──この笑顔は、絶対に歪にしてはいけないんだ。
少年は右手の拳を強く握り、そう決意した。
「あんなに歩いて喉が渇いたでしょう? お好きなお飲み物を飲んでください。君も、遠慮せずに飲んでくれて構わないよ」
「はーい!」
「あ、ありがとうございます」
サッと見たところ、ラベルの貼られていない飲み物が数本並んでいた。一瞬、コーヒーを探したが「いやいや」と奏輝は飲み物を無視した。
「おいしー! 君は飲まないの?」
「あ、俺は……」
「もしかしてこのジュースがほしかった? ゴメンね、半分こしよ!」
「う、うん……ありがとう……」
奏輝は半ば押し付けられた飲み物をどうしようかと処理に困っていた。怪しい雰囲気がしているため飲むのは気が引ける。だが、隣にいる少女の眼差しを裏切るの
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