第一章
惑い、断ち切り
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お兄ちゃん、ユニと遊ぼっ! ユニ、お兄ちゃんと遊びたい! 」
輝く様な笑顔で、少女……ユニが言う。
エレトはユニに何も言わず、目を閉じる。
目の前にいるのは、病で無くなったユニ。
その大切だった妹が、元気にエレトの手を引いて家から出ようとしている。
手を握られている感覚は本物で、目の前にいるのは幻じゃない。
このまま家から出れば、青い空の下、両親が笑顔で待っているのだろう。
だが、
エレトは、動かなかった。
それどころか、睨むかの様にユニを見つめる。
エレトの異様な目付きに気付いたユニは、弾かれる様にエレトから離れる。
「……お兄ちゃん? 」
冗談だと思っているのか、ユニが笑顔で呼ぶ。
しかし、何も喋らずにいると、その顔から笑みが消えていく。
「……お兄ちゃん、どうしたの? 怖いよ……
ユニ、何か悪い事した? ユニの事、嫌いになったの? 」
ユニ顔から血の気が引いて、震え始める。
「嫌いなの……? 」
「……あぁ、俺は「今、目の前にいるお前」が嫌いだ」
「……何で? 」
ユニはエレトが放つ威圧が恐ろしいのか、涙目で聞いてくる。
無力な子羊の様なユニに、エレトは静かに言った。
「この家から俺を出し、心から殺そうとしているからな」
直後。
先程まで涙目だったユニの顔が、不気味な程に歪み、笑う。
『ソレガ答エ? 答エナノ? 』
ユニの口からあの嘲笑う声が聞こえたその時、
エレトは、側にあった剣を鞘から引き抜き、
不気味に笑うユニを、容赦無く両断した。
真っ二つに割れたユニの体が、生々しい音を立てて床に崩れ落ちる。
床が血で染まるのをエレトはずっと見つめていた。
自分の視界が、霧で覆われるまで。
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