巻ノ百四十六 薩摩入りその十一
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「あの星は大御所殿の星じゃ、その星が落ちれば」
「大御所殿はお亡くなりになられる」
「そうなられますか」
「ではその前に」
「出来るだけ」
「うむ、急がねばならんが」
しかしと言うのだった。
「それにはじゃ」
「どうなるかわかりませぬな」
「後藤殿が如何か」
「若しあの方の傷が深く治るのが遅ければ」
「その時は」
「止むを得ぬ」
これが幸村の返事だった。
「我等だけでな」
「駿府に行くしかありませぬな」
「そうせねばなりませんな」
「そしてそのうえで」
「戦わねばなりませんな」
「そうじゃ、そうなっても仕方がない」
まさにと言うのだった。
「戦うぞ」
「我等の最後の戦を」
「それをしますか」
「何としても」
「そうしますか」
「うむ、後藤殿がおられねば危ういが」
彼の武勇、それがなければというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「ここは戦うしかありませぬな」
「後藤殿がおらずとも」
「例えそうなっても」
「そうじゃ、戦ってそしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「我等は勝たねばならぬ」
「祈るしかないですか」
清海が苦りきった顔で述べた。
「後藤殿の傷のことを」
「その時は、ですな」
伊佐も言ってきた。
「我等だけで戦いましょうぞ」
「後藤殿の分まで」
海野も苦い顔で言った。
「そうしましょうぞ」
「何、その時はいつも以上に戦いまする」
望月も言ってきた。
「そして勝ちまする」
「左様、ある戦力で戦うまでのこと」
穴山はあえて不敵な笑みで述べた。
「全力で」
「そうすれば問題はありませぬ」
由利も笑ってみせた、あえてであるが。
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