32部分:第三話 入学その八
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第三話 入学その八
「本当に中学の時と変わらないんだな」
「宜しくね」
「ちぇっ、神様ってのは意地が悪いぜ」
「厚生委員決定」
椎名がその二人をすかさず指差した。
「有り難う。最初に書いておくから」
「はい、クラス委員からも言われたから」
「入学初日で決まりかよ、まだクラス会も何もしてねえじゃねえかよ」
しかし決まったことは決まった。そしてだ。
入学式なのでこの日は担任の先生の挨拶があってそれで解散となった。桜が咲き誇り花びらが舞う中庭ではもう進入部員の勧誘が行われていた。
「映画研究会に入らない?」
「漫画描かない?」
「演劇に興味ない?」
「へえ、文科系の部活も多いんだな」
陽太郎はその数多くの勧誘を見ながら呟いた。花霞の中をしきりに勧誘することが響いている。
「この学校って」
「剣道部に入らないかい?」
「楽しいよ」
「おっ、やっぱりあったな」
目当ての剣道部の勧誘の声を聞いてだ。笑顔になった。
そしてその勧誘のところに行き入部のサインをする。するとその右横にあの赤瀬がいた。彼は柔道部の入部届けにもうサインをしていた。
陽太郎はその彼にだ。笑顔で言うのだ。
「赤瀬だったよな」
「ああ、斉宮君」
また上から言ってきた。
「君は剣道部なんだね」
「ああ、そっちは柔道部なんだな」
「うん、頑張るよ」
優しい雄牛を思わせる声であった。
「部活もね」
「そうか、じゃあお互い頑張ろうな」
「うん、そうだね」
剣道部の左隣は居合部である。そこにいたのは。
「あれっ、また」
「また?」
「ああ、何でもないさ」
赤瀬の上から聞こえる問いにはこう返した。
「何でもないからさ」
「そうなんだ」
「ああ、けれどこの学校居合部もあるんだな」
「剣道部とは別にあるんだね」
赤瀬も今はそのまま応えるのだった。
「居合部も」
「剣道と居合は違うんだよな」
それを彼に話す陽太郎だった。
「実は」
「そうなんだ」
「剣道は竹刀、形だと木刀だけれど居合は実際に真剣も使うから」
「真剣っていったら日本刀だよね」
「そうさ。それを使う場合もあるんだよな」
そのことを話すのだった。
「実際にな」
「凄いね、それって」
「あの娘が居合するのか」
その彼女を見ながらの言葉だった。
「へえ、意外だな」
「斉宮」
そしてここで、だった。椎名の声が下から聞こえてきた。
「部活決まった?」
「ああ、決まったよ」
彼女は赤瀬の隣に来ていた。彼女に対しては見下ろす形になってしまった。
「剣道部な」
「そうなの」
「それで椎名は何処の部活なんだ?」
「天文部」
そこだというのだ。
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