第四章
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「そっちは」
「そうなのか」
「勿論あんた自身もな」
「男もか」
「いいからな」
「それは助かった。俺は男の趣味はない」
シクもそれはと答えた。
「それじゃあ暖かく寝てくれ」
「そうしていいか」
「そうだ、そうしてくれ」
こう言ってだ、そのうえでだった。
シクは旅人に寝床まで出してくれた、旅人はその中で久し振りに暖かく寝られた。そして朝にはだった。
朝食を出してくれた、その後で旅人は彼のゲルを後にしたが見送るシクに対してこんなことを言った。
「俺はこの日のことを忘れないからな」
「そうか」
「ああ、色々と有り難うな」
「大したことはしていない」
シクは旅人に無表情の顔で応えた。
「礼には及ばない」
「そうなのか」
「そうだ、だから覚えることもない」
それには及ばないというのだ。
「別にな」
「そんなものか」
「そうだ、だからだ」
それでというのだ。
「俺のことは何も覚えるな」
「そうなのか」
「そうだ、そして旅の間はな」
「何かとか」
「気をつけることだ、いいな」
「その忠告気をつけておくな」
「草原の獣達にはな」
こう言うのだった。
「是非な」
「わかっているさ、じゃあまた機会があったらな」
「会った時はか」
「礼はいい」
「そうなのか」
「さっきも言ったがそれに及ぶ様なことはしていない」
そうだと言うのだった。
「だからいい」
「そうか」
「そうだ、別にいい」
こう言ってだ、そしただった。
シクは旅人を送り出した、そのうえで。
旅人は旅を続けてそうして絹の国に着いた、絹の国を旅をして回り他の国も回ってだった。旅人は故郷に帰ってから世界中を旅したことを書に書いたが。
そこでシクのことを書いた、彼のもてなしと名前までも。それが彼だけでなく草原の民達の名も残ることになったがそれはシクの知らないことだった。だが彼の知らないところで彼の名前は歴史に残ることになった。それが旅人の彼への礼となった。
遊牧民のもてなし 完
2017・7・24
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