第三章
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「そこは皆いる、馬で二時間程行くとな」
「そこにか」
「俺の部族の集まりがある」
「成程な」
「今この辺りは平和だ」
「凄くいいハーンが出てだな」
「その方が上手く治めていてくれてな」
それでというのだ。
「部族同士の戦もなくだ」
「平和か」
「そうだ、それで羊も普通に食えてな」
「酒もか」
「飲める、茶もな」
こちらもというのだ。
「飲める、じゃあもうすぐ煮える」
二人の間には鍋がある、その鍋の中に羊の肉がある。それは塩であっさりと味付けされたものだった。
「食うぞ」
「ああ、それじゃあね」
「内臓もあるがいいか」
「ああ、何でも食わないとな」
それこそとだ、旅人は彼に笑って返した。
「旅は出来ないからな」
「血も飲むか」
「勿論さ」
そちらもとだ、旅人はシクに笑って返した。
「そちらもな」
「ならいい、血も飲んでな」
「栄養をつけろか」
「俺達は内臓も食って血も飲んでいる」
羊のそれをというのだ。
「それこそ羊の全てをな」
「そうして生きているよな」
「そして茶もな」
言いつつだ、シクは旅人に茶を出した、飲めという合図だった。
「飲んでだ」
「生きているんだな」
「何でもな、食って飲んでだ」
「そうしてか」
「生きている」
「それが草原だな」
「そして旅人はもてなす」
このことも言うシクだった。
「それが草原のならわしだ」
「だから俺ももてなしてくれるか」
「たらふく食え、俺も食う」
シクもというのだ。
「そして血も茶も飲んでな」
「酒もだな」
「後で酒を出す」
今は茶を飲みつつ言うのだった。
「そうして楽しむぞ」
「二人でか」
「今夜はな」
こう話してだ、シクは旅人に血も羊の血も飲ませた。実はこちらは癖があり旅人の好みではなかったが飲んだ。
そして肉、羊の内臓もだった。
食った、そうしてクミズも飲んだ。シクは旅人に彼自身が言った通りに肉をたらふく食わせただけでなくその馬の乳の酒もだった。
飲ませた、勿論彼もしこたま飲んでだった。
鍋を収めてからだ、彼にこんなことを言った。
「悪いが俺は一人で暮らしている」
「まさかと思うが」
「女は出せない」
それはというのだ。
「だからそこは我慢してくれ」
「いや、それはいいからな」
旅人はシクのその言葉に苦笑いで返した。
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