第55話
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を待つ。
仕掛ける二人はそんな彼女に舌を巻いていた。不得手とされる間合いで、二人の攻撃に対処できるとは……。
猪々子の武才は、周りの想像を遥かに超えている。
「――ちぃッッ」
顔の横に拳が通る。猪々子の頬に掠り、血が流れた。
ここにきて楽進が猪々子を捉え始める。というより、猪々子が避け損なった。
楽進の攻撃パターンが変わったのだ。只でさえ多彩な拳法にフェイント、于禁もそれに合わせて来た。
猪々子の身体を、次々と掠めていく。フェイント織り交ぜられては、避け続けるのは不可能だ。
勝てる。
強者を挟んで猛攻を仕掛けていた二人に、希望が湧いた。
相手が本来の力を発揮できていれば、勝機は無かったはずだ。それほどに実力が離れている。
二度と通用しないであろう、気弾による奇襲が生んだ好機。必ずものにして見せる……!
そんな二人の気概を感じ取ってか。はたまた、攻め続けられたことによる苛立ちか。
猪々子の額に血管が浮き上がる。図に乗るな。この程度、窮地ですら無い!
「なっ――ッ!?」
猪々子による頭突き。突然受けた衝撃に楽進が立ち眩む。
楽進と于禁の連携は巧い。いや、上手過ぎる。
だからこそ生じる隙があった。二人のフェイントが重なった時だ。
「オ、ラアアァァッッッ」
一閃
「きゃあ!?」
于禁は脇に迫った凶刃に、辛うじて双剣を滑り込ませて受け止めた。
だが、受けきれない。強すぎる衝撃に彼女の身体が浮き上がり、猪々子は構わず于禁ごと大刀を回転させて、楽進めがけ振りぬいた。
「ぐッ!」
楽進も于禁同様、両の手甲を交差させ防御する。
そして于禁と同じく浮き上がり、二人して大きく弾き飛ばされた。
地面を転がり、楽進は即座に立ち上がった――が。
「沙和、無事か!?」
于禁が気を失っている。額から血を流している所を見ると、受け身に失敗して頭を打ったようだ。楽進は自分達の勝率が、顕著に下がったことを自覚した。
不幸中の幸いは、先程の一振りが全力で無かった事だろう。
猪々子の間合いで腰の入った一振りなら、二人の胴ごと両断されていた。
斬撃というより、鈍器に近い一撃。目的は距離を離す為だろう。
「勝負あり――ってか。ここらで降伏したらどうだい?」
猪々子個人としては、二人を殺めたくない。
強者と認めたこともあり、是非とも肩を並べて戦場に立ちたい。
陽が魏を打ち破り吸収すれば、それも叶うだろう。
そして何より、見知った者の死を悲しむ顔を、見たくないと思った。
「こう……ふく?」
両の腕に激痛が走る。チラリと目を向けると、手甲が砕けていた。
痛みは、骨に異
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