第1部
アリアハン〜誘いの洞窟
洞窟にいざなわれて
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奇妙な姿をしていた。
ひょいと覗いてみると、いくつもの渦が絡み合いながら闇に溶けて、さらにその闇が渦となって再び生まれる……なんとも不思議な感覚だ。
「ここに飛び込めばいいのか?」
「文献にはそう書いてある」
だが、4人とも一向に動こうとしない。というか、私たち3人は、リーダーで勇者のユウリが一番先に飛び込むのかと思って様子を見ていたのだけれど。
「なあ、入らないのか?」
沈黙を破ったナギが、ユウリに問いかける。だが、ユウリは、口を真一文字に引き結んだままそこから動かない。
「どうしたの、ユウリ?」
私が心配してユウリを横から覗き込むが、その横顔には汗が一滴、滴り落ちている。
「なあ、こんなところで時間つぶしてても仕方ねーぜ。なんなら、オレが一番先に行くけど?」
そのとき、ほんの一瞬だけ、ユウリの顔が緩んだ気がした。
そんなことは露も知らないナギは、すたすたと旅の扉へと近づいていく。そして、後一歩で旅の扉に入るというときに、なぜかナギの姿が一瞬にして消えてしまった。
「なーんてな。今度はお前が穴に落ちる番だぜ!!」
いつのまに回り込んだのか。ナギはユウリの背中に立って、目にも留まらぬ速さでユウリを突き落とした。
「なっ……!!??」
これにはさすがのユウリも驚いたみたいで、両腕を振り回して、必死に落ちないように抗っていたが、重力に勝てるはずもなく、彼はものの見事にナギの計画に嵌り、旅の扉へと吸い込まれていった。
その後姿を見送りつつ、ナギは不敵の笑みを浮かべた。
「ふっふっふ。あー、やっとすっきりしたぜ。見たか? あの慌てよう」
「ユウリちゃん、いい飛込み方してたね〜」
「大丈夫かな、ユウリ……」
さっきのあの様子からして、ユウリが無事に旅の扉を通れるか、私は少し不安になってきた。
そしてその不安は見事に的中してしまうのである。
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