暁 〜小説投稿サイト〜
カラミティ・ハーツ 心の魔物
Ep10 英雄がいなくても……
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
。フェロンはその場へ駆け出し、稲妻のような速さで抜刀する。
 大丈夫、戦える。傷はそれなりに癒えた。
「きゃぁぁぁああああああっ!」
 悲鳴を上げる女の子を背にかばい、その片手剣は魔物を一閃した。

「……何とかなったみたいだ」
 魔物を一体、斬り捨てると、驚く女の子はそのままに、フェロンは同い年くらいの少年に襲いかかっていた魔物へと走る。
 大丈夫だ、戦える。この程度でへたるような体力じゃない。
「わおっ! お前……!」
「そこをどけッ!」
 紫電一閃。斬りかかった刃は確実に、怪物の喉元をしかととらえた。
 英雄がいないなら。英雄がいないなら。力を尽くして代わりとなろう。
 フェロンは剣の露を払う。
「……二体目」

 三体目の魔物は、なんとルードの宿の前にいた。
「……馴染みの宿だ、やらせるか」
 フェロンはそう吐き捨てながらも、自分の心を叱咤した。
大丈夫、戦える。まだまだ剣は鈍っちゃいない。
「フェロンさんー!」
 泣きつくルードに優しく笑いかけ、彼は英雄の代わりに剣を振るった。それはあっさり魔物を斬った。くずおれた魔物は人に戻る。魔物は美しい、美しい、娘だった。それを見、泣き伏す家族たち。フェロンは知っている。これが摂理だ。
「…………」
フェロンは振り向かずに、宿に戻った。

  ◆ 

 宿の部屋で、フェロンは膝をつく。剣を支えにして何とか倒れずにしている。
――彼は、限界だった。
 ちっとも余裕じゃなかった。大きな傷がないのが不思議なくらいだ。
「……三体も相手にすればぁね」
 荒い息をつき、呼吸を鎮める。
「……リア」
 フェロンはそっと呼びかけた。
「君は、いつまで目覚めないわけ?」
 あんな大きなことがあったのに、英雄はいまだ眠ったままで。
「……目覚めろよ」
 呼びかけても、何一つ反応はないままだ。
 英雄はいない、英雄はいない。英雄の代役ももう戦えない。
「誰がみんなを守るのさ……」
 リクシアは、目覚めない。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ