315部分:第二十三話 嫉妬と憤怒その九
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第二十三話 嫉妬と憤怒その九
そのうえでだ。また言うのだった。
「してやられたな」
「どうもーーーーー」
「褒め言葉だと思っておくからね」
「そういうことでね」
「有り難う」
「全く。まあ驚いた俺が悪いか」
負けは認めるしかなかった。それはだ。
「仕方ないな」
「あの、それで」
月美の声がしてきた。
「あっ、それで?」
「さっきですけれど」
いつものおずおずとした調子の言葉ではあった。だがそれでも言うのだった。
「今さっき、私を」
「月美を?」
「庇ってくれたんですね」
彼女が言うのはこのことだった。
「そうだったんですね」
「あっ、そうだったかな」
陽太郎は言われてそれに気付いたのだった。
「俺特に」
「気付いてなかったんですか?」
「今言われてはじめてだけれど」
「そうだったんですか」
「うん、実は」
こう返す彼だった。
「別にさ。意識しては」
「無意識だったんですか」
「いや、悪いけれど本当に」
「それってつまりは」
月美はそれを聞いてだ。微笑んで言うのだった。
「私を自然に守ってくれたってことですよね」
「そうなるかな」
「はい」
そうなると返す月美だった。
「本当に有り難うございます」
「そんなのいいさ」
「いいんですか?」
「男が守るものじゃない」
当然の様に言ったことだった。
「それって」
「守るって」
「男が女の子を守るものだろ?」
陽太郎はまた言った。
「それができないとさ、やっぱりさ」
「そういう言葉はよく聞きますけれど」
「だからさ。特に気にすることはないさ」
「それでも」
「それでも?」
「本当に有り難うございます」
月美は微笑んだままそれでまた礼を言ったのだった。
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