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真田十勇士
巻ノ百四十六 薩摩入りその五

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「命は粗末にせぬ」
「そうしたじだいになりましたな」
「だからじゃ、この度の戦でもな」
「死ぬことはですな」
「拙者は許さぬ、そのことも覚えておくのだ」
 服部の言葉は強かった、伊賀者達に言ってそうしてだった。今は駿府城の守りを十重二十重に固めさせた。
 駿府城がそうなっている時秀頼はようやく薩摩に入った、薩摩に入るとすぐに迎えの籠が来てだった。
「これからはです」
「間道を歩かずにか」
「これに乗って頂き」
 その籠にというのだ。
「そうしてです」
「屋敷に入りか」
「そこでお過ごし下さい」
 こうその使者に言われた。
「是非」
「わかった、ではな」
「はい、そして屋敷に入られたらすぐにです」
 まさにその時にというのだ。
「殿も来られるので」
「そうか、そうしてか」
「今後のことをお話されるので」
「その言葉に従ってじゃな」
「お過ごし頂くことになります」
「わかった」
 秀頼はその者の言葉に確かな顔で頷いて応えた。
「それではな」
「その様にですな」
「生きさせてもらう」
「その様に、それでは」
「籠にお乗り下さい」
「わかった」
 秀頼も応えてだ、彼は籠に乗り。
 国松も籠に乗った、そして幸村達は彼等を守ってさらに進んでいった。その道中幸村は島津家の者達に言われた。
「よくぞです」
「ここまで来られました」
「ここまで右大臣様をお守り下さいました」
「大坂から」
「見事です」
「いえ、これは全て天命です」 
 幸村は自分への言葉に謙遜して応えた。
「そして家臣達がいたからこそです」
「十勇士の方々ですな」
「お話は聞いておりますぞ」
「一騎当千の方々と」
「天下の豪傑と」
「大助もいましたし」
 我が子のことも話した幸村だった。
「ですから」
「それで、ですか」
「ことを果たせた」
「そう言われますか」
「それがし一人ではとても」 
 秀頼を救えなかったというのだ。
「助けて下さる方もおられて」
「木下殿ですな」
「そのお話は聞いておりまする」
「無論他言はしませぬが」
「そうでしたな」
「はい、ですから」
 そうしたこともあってというのだ。
「それがし一人ではとても」
「ううむ、そう言われるとは」
「真田殿は噂通りの方ですな」
「実に謙虚で出来た方です」
「まことの武士ですな」
 島津家の者達は幸村の謙遜からかえって彼の人柄を知った、そのうえで彼等は幸村に鮭を勧めた、その時にだ。
 彼等は治房や長曾我部、明石達も呼んだ。そして彼等だけでなく。
 十勇士や大助達も呼んで盛大に宴を行った、そこで彼等の戦ぶりを聞いた。この時にだ。
 幸村と十勇士達の戦を聞いてだ、彼等は唸って言った。
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