第二章
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「けれどね」
「それでもよね」
「先生の犬嫌いは変わらないから」
「それでよね」
「引き取ってもね」
「世話をするとか」
それこそというのだ。
「想像も出来ないよ」
「あそこのお爺さんとお婆さんも考えたわね」
「本当にね」
「そんな先生にどうして引き取ってもらうか」
「交渉上手よね」
「その交渉に負けたよ」
紫樹もこのことを認めるばかりだった。
「本当にね」
「それで交渉に負けて」
「引き取ったはいいけれど」
「最初から世話をするとか無理だし」
「だから私達によね」
「うん、頼むよ」
世話をすることを最初から放棄している返事だった。
「それじゃあね」
「そう言ってくるてわかってたし」
「いいわよ」
「それじゃあね」
「犬の世話も私達が引き受けるから」
「そういうことでね」
まさにと言ってだ、紫樹は実際に引き取った犬の世話は一切しようとせず自分の仕事に専し続けていた。
だがそれでもだ、犬のシロの方はというと。
彼を見るとしきりに尻尾を振って顔を向けてきた、紫樹はその彼を見て双子にどうかという顔で言った。
「あの、僕はね」
「はい、犬がお嫌いなのに」
「それでもですよね」
「やけに犬に懐かれていますね」
「そうなっていますね」
「何でかな。昔から犬は嫌いなのに」
それでもというのだ。
「犬に好かれるんだよね」
「そうですよね」
「私達も不思議に思っています」
「どうしてでしょうか」
「先生は犬に好かれるのでしょうか」
「どうしてかな」
紫樹自身腕を組み首を傾げさせることだった。
「僕は犬に好かれるのかな」
「生きものはいい人がわかるっていいますし」
「それでじゃないですか?」
「それでシロも先生に懐いているんじゃ」
「そうじゃないですか?」
「けれど僕は犬が嫌いだし」
このことは変わらないというのだ、彼にとっては。
「犬に笑顔を向けたことも世話をしたこともないのに」
「だから先生がいい人だからですよ」
「嫌ってもそれだけですよね」
「いじめたりしないですよね」
「意地悪もしないですよね」
「世話はしないけれどそうしたこともしないよ」
紫樹はこのことは確かにだと言い切った。
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