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空に星が輝く様に
309部分:第二十三話 嫉妬と憤怒その三

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第二十三話 嫉妬と憤怒その三

「それで」
「そうだったんだ」
「よかった」
 今度はほっとした言葉だった。
「そう言ってもらって」
「そんなに嬉しかったんだ」
「嬉しいからこう言うの」
 まさにその通りの。一直線の言葉だった。
「だから」
「成程ね」
「それで赤瀬」
「うん」
「もう椎名って呼ばなくていいから」
 こう彼に告げた。
「それはいいから」
「じゃあ何て呼べばいいの?」
「愛海」
 他ならぬ彼女のその名前である。
「この名前で呼んで」
「愛海って」
「そう、名前で呼んで」 
 これが彼女の言葉であり願いであった。
「いいかな」
「わかったよ」
 赤瀬はまずは頷いて。それからだった。
「じゃあこれからはね」
「うん、呼んでみて」
「愛海さん」
 実際にだ。呼んでみた。
「キャンプファイアー宜しくね」
「こちらこそ。御願い」
 椎名はにこりと笑って応えた。それは普段の彼女が全く見せはしない、そうした実に女の子らしい可愛らしい笑顔なのであった。
 そしてだ。狭山と津島もだった。
 調理場でまかないの昼食と弁当を一緒に食べながら。話をするのだった。
「ねえ」
「何だよ」
 津島からだった。狭山はそれに応える。
「何かあるのかよ」
「あるから声をかけるのよ」
 だからだというのであった。
「それでね」
「ああ、それで何なんだ?」
「キャンプファイアー行くわよね」
 津島はアメリカンクラブサンドを口に入れながら彼に問うた。
「ちゃんと」
「ああ、行くぜ」
「わかってるわよね」
「俺一人で相手をその場でゲットしてな」
 能天気な調子での言葉であった。
「そうしてな」
「あんた馬鹿でしょ」
 狭山のその実に能天気な言葉を受けてだ。こう返す津島だった。
「ひょっとしなくても」
「おい、馬鹿って何だよ馬鹿ってよ」
 カツサンドを食べながら抗議する狭山だった。彼もまたサンドイッチであった。まかないはと見ればどちらもフルーツ盛り合わせである。
「それって何なんだよ」
「フォークダンスよ、フォークダンス」
「ああ」
「それもキャンプファイアーを囲んでね」
「だからやっぱりその場で相手をゲットしてだな」
「本気で言ってんの?それ」
「そのつもりだぜ」
 売り言葉に買い言葉であった。
「俺は何時でも本気だぜ」
「じゃあ言うわよ」
 怒ってだ。自分から言ってしまった。
「あのね、ゲットするならね」
「ああ、何だよ」
「ここでしなさいっての」
 これが言ってしまった言葉である。
「わかったわね、いいわね」
「おう、わかったぜ」
 狭山も半ば無意識のうちに言い返す。

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