暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 3
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じように「どうして何もされなかったんだろう?」「これから何をされるんだろう?」って不安でいっぱいになっているでしょうね。いい気味だわ!」
 罪人が罰を望むのなら、何かをして責めるのではなく、何もしないことで責め苦を持続させる。決して解消なんかさせない。
 これは、クロスツェルさんとプリシラ様の間柄だからこそ効果的な「罰」なのだろう。
 (うん。私でも、いつ・何処で・どんな形でお仕置きをされるか判らないっていうのはすっごく嫌だ。プリシラ様相手だと、特に。……あの人達、滞在中はずーっとびくびくしながら過ごすんだろうなぁ……)
 プリシラ様の前で目線を泳がせる男性達の姿を想像してちょっぴり楽しくなってしまった私は、結構性格が悪いのかも知れない。
 「さて。これから役持ち達相手に一芝居打たなきゃいけないんだから、その悪巧み顔は引き締めなさいね」
 「! すみません」
 執務室の扉を横目に見ていた私の頭を軽く撫でて、礼拝堂へと足先を向けるプリシラ様。
 私も、慌ててその背中の半歩後ろに付いて行く。
 いけない、いけない。無表情、無表情……

 「それと、フィレスさんにはちゃんと最後まで事情を説明して差し上げなさい」

 「ぶふっ!」
 「あの二人、始めの一歩も踏んでないんだから。ぎこちない空気をこのまま放置しておいたら、絶対悪いほうに(こじ)れるわよ。主に、エルーラン殿下が。」
 「そう……、なんですか……?」
 転けそうになって崩れかけた姿勢を正しつつ、必死に冷静を装う。
 ……フィレスさんとの会話は聴こえてなかった筈なのに、何故私が原因だとバレた……
 「「三十代の童貞」に「遅れて来た初恋」なんて、余計な茶々を入れた分だけ悲惨な結末を迎えるものよ。三十歳の大台に足を伸ばしかけているクロスツェルが良い例でしょ? 娘として面白くないと感じるのは解らなくもないけど、当分の間は生温かく見守ってあげなさい」
 「たった今。無性にお父様を応援したくなりました。」
 「でしょう?」
 「ええ……。後で精一杯、最初から最後まで細部に(わた)って懇切丁寧に説明しておきます」
 「それが良いと思うわ」
 「はい」

 従兄妹から娘へ、恋愛事情と経験値をさらっとぶちまけられてしまったお父様が不憫すぎて、身内が何処かに攫われてしまいそうだとモヤモヤしていた気分は一掃されました。

 哀れ、お父様。
 
 
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