305部分:第二十二話 文化祭その十
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第二十二話 文化祭その十
「俺達も」
「そう。よかった」
それを聞いて静かに頷く椎名だった。
「それなら」
「確か踊ったら幸せになれるんだったな」
「そうよね」
「うん」
椎名は二人のその問いにこくりと頷いてみせた。
「その通り」
「じゃあ是非な」
「一緒に」
「そう、二人で踊る」
また言う椎名だった。
「私もそうするし」
「赤瀬とか」
「そう」
こう陽太郎に答えた。
「そのつもり」
「何か凄いアンバランスな組み合わせだな」
陽太郎は椎名のその言葉に首を捻る。その間に注文したフルーツホットケーキとホットミルクティーが来た。ホットケーキの上に様々な種類の小さく切ったフルーツがかけられている。中々豪勢である。
それを切って食べながらだ。三人は話すのだった。
「それってな」
「そう」
「ああ、失礼な言葉だけれどな」
「斉宮だったらいい」
「俺だったらか」
「つきぴーを守ってるから」
だからだというのである。
「それでいい」
「そうなのかよ」
「そう。そして」
「そして?」
「多分狭山と津島も出るから」
この二人のことも話すのだった。
「三組揃う」
「だよな。それ考えたらあいつもいいか」
陽太郎は首を少し傾げさせながらこう言った。
「この文化祭」
「運動会と文化祭はチャンス」
「チャンスなのかよ」
「そう、仲を進展させるチャンス」
椎名は紅茶を飲みながら述べた。
「そのチャンス」
「よく言われるよな、そのこと」
「だからこそ。後は二人きり」
「えっ、おい」
「二人きりって」
陽太郎だけでなく月美もだ。椎名の今の言葉に驚いた。
「あのよ、今」
「愛ちゃん、それって」
「その通り。校内デートにゴー」
言葉は淡々としているが二人の心に告げたものだった。
「いちゃいちゃして来ること」
「いちゃいちゃって」
「そこまで」
「そう、徹底的に皆に知らせる」
こうまで言う椎名だった。
「何かあったら私がいるから」
「いや、それはいいさ」
陽太郎は椎名に真面目な顔で返した。パンケーキを刺して切るその手が止まってしまっていた。そのうえでの話になっていた。
「別にさ」
「いいの」
「それ位俺がするさ」
だからだというのだ。
「月美のことだったらな」
「そうするの」
「ああ、そうする」
強い言葉での返答だった。
「だから任せろ」
「わかった」
椎名はいつもの一言での返答で頷いた。
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