先への覚悟
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に、ヴィオラは他人事のように赤鬼だなと思った。
「結構。ならば、私からシトレ大将にはお伝えしておこう。いいですね」
「わかった。ビロライネン大佐に任せる、アロンソ中佐もいいな」
「報告があがるのであれば、どのような形でも構いません」
「では、これで会議を終了する」
怒りをこらえきれぬように、配られた報告書を力強く握りしめ、ビロライネンは椅子をなぎ倒すように立ち上がった。
「アロンソ中佐。貴官は下からの意見を上に阿呆のようにあげるだけの人物のようだな。まだ録音機の方が安上がりだ」
「必要だと考えたから、あげただけにすぎません」
「戦術の何たるかをわからぬ、小僧の意見をな」
吐き捨てるように言えば、ビロライネンは足音荒く立ち去った。
扉が音を立てて閉まる。
しんとした室内に、リバモアが大きなため息を吐いた。
困ったように頭をかいた。
「アロンソ中佐。何を焦っているのだ」
アロンソは片眉をあげる。
あれだけ激しい言い争いをしても、眉根を動かさなかった彼にしては珍しいことに。
「部下が戦うというのであれば、それについては私も覚悟を示さなければならないと、そう思っただけです。不快と思われるのでしたら、失礼いたしました」
珍しくも感情が込められた口調に、リバモアは困った様子を崩すことなく、首を振る。
「いや、私は良い。だが、君は面倒なことになるぞ。ビロライネンはロボス大将と親しいことを知っているはずであるが」
「ええ。存じております。ですが、だからこそ、ばかばかしい」
断言するように言った言葉に、リバモアとヴィオラは目を丸くした。
「言葉が過ぎました。ですが」
大きな息を吐いて、アロンソが言った。
「ある者から、小官は先があるというのならという言葉を聞きました」
「それは随分と酷い言葉だな」
「いいえ。小官はそうは思いません……先があると、今まで小官は思っておりました。そう言い聞かせて守ってまいりました。だが、先があると誰が決めたのだろうと思ったのです」
独り言のような言葉に、ヴィオラは隣にいる年の近い軍人を見ていた。
「だが、私は家族を――守るために、軍人なろうと誓ったのです。妻を、子供を。だが、そんな子供は、今は士官学校にいて、戦うすべを学んでいる。守るために軍人になったにもかかわらず」
アロンソは報告書を叩きつけるように、机に置いた。
散らばった紙が、こぼれたお茶に汚れることを誰も見ることなく、アロンソを見ている。
「我々の仕事に先があってはいけないと、そう思っただけです。終わらせなければならないのです、こんなことは。それが我々の仕事のはず」
力強く言って、アロンソは立ち上がった。
さすがに言い過ぎたと思ったのか、冷静な顔立ちに一瞬後悔が浮かび、丁
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