先への覚悟
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通り、当日はスレイヤー少将の艦隊に作戦参謀補佐として配属されることになった。
緊張に包まれる空気の中で、ヴィオラは息を吐く。
そもそもヴィオラは、今までも、そしてこれからもおとなしく暮らしていきたいと考えている。
民主主義を守るための戦い。
結構じゃないか、だが、それで死ぬのはごめんだ。
同盟軍に入ったのも、就職に際してそれが一番安定していたからだ。
前線ではなく、後方士官として生活すれば、退職するころには老衰するまで暮らしていくだけの年金がもらえる。
退職後の再就職を考えれば、十分すぎるほどだ。
喧々囂々と互いが意見を主張する嵐のような会議など、望んだことは一度もない。
どうかおとなしく終わるようにと考えた、ヴィオラの前にアロンソ中佐から配られた報告書を見て、ヴィオラは天を仰いだ。
あ、だめだ、これ。
+ + +
報告書を一度読んで、二度読んでからヴィオラは恐々とビロライネンの方を見た。
震えている。
その理由は分からなくもない。
『並行追撃作戦における、敵要塞からの砲撃の可能性について』
と、銘打たれた報告書を読んで、怒らない人間などいないだろう。
そもそも前提条件を、古いアニメさながらのちゃぶ台返しだ。
敵に打たせないために並行追撃するのに、敵が撃ってきたら意味がないよね。
子供でも考えつく論理に、思わずヴィオラはそう言いそうになった。
実際に左右の各室の担当責任者は目を丸くしているか頭を抱えているかのどちらかだ。
絞り出すようにビロライネンが口を開いた。
「これは何だ、アロンソ中佐」
「危惧された報告書です。現在のところ作戦の計画は練られているが、それが失敗した場合のことが考えられていないと。ならば、敵が並行追撃作戦を行った際に、味方事砲撃された場合にどうするか考えておいた方がいいかと」
「情報参謀の仕事か、馬鹿者!」
叩きつけられた机がたわみ、派手な音を立てた。
置いていた熱いお茶がこぼれ、リバモア少将が渋い顔をした。
それに対してコメントをする余裕は、他にはない。
「考えるのは作戦参謀の仕事でしょう。だが、それは訓練がなければ何もできないと同じ。で、あれば訓練参謀としては、いかがかと要求せざるを得ません」
「そのようなことを、古くから杞憂という。君の部下は天が崩れる心配でもしているのか」
「天は崩れずとも、砲撃はボタン一つで起こりかねないことをお忘れなきよう」
「作戦参謀からそのような話は聞いていない」
「で、あればこれが最初の報告となります。判断は上にお任せいたしましょう」
「そうだな。シトレ大将が判断してくださ……」
再び叩かれた音が、リバモア少将の言葉を奪った。
真っ赤な表情で怒りを表す様子
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