先への覚悟
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直聞きたくなかった言葉だね」
仰ぐように天を見て、そこに蛍光灯の明かりを見れば、ヤンは静かに口にした。
「今日の話は敵が味方事撃つ可能性を考えて、作戦を変更するようにという忠告かい」
「いえ。先ほども言いましたが、今更変更は無理でしょう――ヤン少佐がおっしゃったように、そもそもの作戦の前提を変えることになる。そして、それを止められる人はいない」
「そうだね。それができるなら、最初から攻略作戦は中止されている」
「だから。これをお渡しいたします」
続いたのは封筒だ。
受け取ったヤンが封筒の中に、堅いものを感じた。
データメモリ。
「先ほどお渡しした報告書は、明日の定例会議でアロンソ中佐を経由して、上層部に渡されます。ですが、おそらくはそれ以上は上がることはないでしょう」
ヤンは隣で苦い顔をして聞いている。
否定の言葉を告げることもできず、ただ手にした封筒の中身の感触を確認していた。
「そちらのデータメモリと同じものを、スレイヤー少将にお渡ししました。スレイヤー少将が信じてくださったのなら、少なくとも被害は抑えられるでしょう。そうなった場合に、そのデータの中から最適な行動をとっていただけることを、信じています」
「一つではないのかい」
「ええ。状況に応じて二種類の策を用意しています、どちらをとるかはお任せします」
「わかった。しかし、信じるか。私を信じていいものなのかな。残念だけど約束はできないよ。でも、できる限りのことはさせてもらう」
「その言葉で十分です」
アレスが唇をあげて、紅茶を飲み干した。
同じように、ヤンが紅茶を飲み干した。
「でも、もしこれが正しいのであれば、君がこれをもって、当日に進言するべきじゃないか」
「作戦参謀の尉官級は各艦隊に散らばるでしょう」
言葉に、ヤンは頷いた。
艦隊司令部の作戦参謀は、基本的には戦闘が起こるまでの作業が多い。
と、言うよりも戦場で何十人もの参謀がいたら、収拾がつかなくなる。
最低限の人数――佐官以上が艦隊司令部に残り、作戦指揮について案を出す。
その他大勢の尉官は、各艦隊の分艦隊に配備され、艦隊司令部とのつなぎ役になるのだ。
「だが、それでも緊急時には別艦隊から案を出すことだって可能だろう」
「無理でしょう。私の当日の担当はスレイヤー少将の艦ですからね。そんな余裕はないかと」
「……な」
ヤンが驚いたように、アレスを見た。
なぜといった顔に、アレスは肩をすくめた。
「前線を希望したら、二つ返事で許可が得られました。ビロライネン大佐は、よほど邪魔だったようですね」
「何を笑っている。普通なら連絡員だって前線は避けられる――それもスレイヤー少将の艦は最前線じゃないか。君が言ったことが本当ならば、確実
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