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翠碧色の虹
第三十幕:迷う心の虹
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いよね!」
時崎「高月さん!」

俺は、持っていた高月さんの鞄を渡そうとした時−−−

笹夜「きゃっ!」
時崎「おわっ!」
心桜&七夏「!?」

高月さんと少し手が触れて、反射的に手を引っ込められた。その勢いで鞄を落としてしまい、中身が飛び出してしまった。

笹夜「す、すみませんっ!」
時崎「いや・・・こっちこそ!」

慌てて鞄と中身を拾う高月さん、七夏ちゃんもすぐに手伝う。

前にもあった。あれは確か、ファーストフード店の時だ。高月さんと手が触れた事に対する反応が、俺には拒絶されているように思えて切ない。

心桜「お兄さんっ!」

天美さんに声をかけられて我に返る。天美さんは大きな浴衣を手にしている為、身動きが取れないようだ。

時崎「え!? あ、すまないっ!」

俺も落とした荷物を拾うのを手伝う。すると、その様子を見ていたピアノの販売員さんも、高月さんの荷物を拾ってくれ、そのまま話しかけられた。

笹夜「すみません。ありがとうございます!」
店員「いえ。先ほどの演奏、とても良かったです! オリジナルの曲でしょうか?」
笹夜「え!? はい・・・このピアノ、音色がとても素敵でした♪」
店員「ありがとうございます!」
笹夜「え!?」
店員「申し遅れました。私、RunDraw社の者です」
笹夜「まあ! こちらのピアノは電子ピアノなのでしょうか?」
店員「はい。グランドピアノの持つ良さを、アップライトピアノのようにコンパクトにまとめた新製品となります」
笹夜「確かに奥行きがとても短いのに、音色はとても奥行きがあります♪」
心桜「おっ! 笹夜先輩がシャレたっ!」
七夏「ここちゃー!」
時崎「・・・・・」

俺は、さっきの高月さんとの出来事が引っかかって三人の会話がぼんやりとしか届かない状態だった。

店員「こちらのピアノが、今までの電子ピアノと物理的に異なるのは、グランドピアノの発音や構造をシミュレートする物理演算を行っております『ピアノ・モデリング音源』を搭載しています」
笹夜「えっと・・・」
店員「従来の電子ピアノとは仕組みが異なるという事です。グランドピアノの持つ優雅さを、お手軽にリビングで楽しめます」
笹夜「よく分からないですけど、音が素敵なのはよく分かります♪」
心桜「おっ! 笹夜先輩が!」
七夏「ここちゃー!」
時崎「・・・・・」
店員「先ほどの演奏は、オリジナル曲とおっしゃってましたね?」
笹夜「え!? はい」
店員「私たち、RunDraw社ではオリジナルのピアノのデモ演奏曲をご提供くださるお方を募集いたしておりまして−−−」
笹夜「まあ!」

高月さんと店員さんは、ピアノの事でしばらく話し込んでいるようだが、その詳細までは分からない。俺はこの後、
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