断章
とある昔話
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……ん? 誰かと思えば、子供か。
何だ、お前。こんな所に一人か。ふぅん、さては迷子だな?
人間の姿を見るのも……何百年ぶりだろうかねぇ。
まぁ、良い。別に良いさ。
折角だ。私の話を聞いていけよ。
昔、私は一人の少女だった。
虫一匹すら殺せない、純粋で優しい少女。
父と母、一匹の白猫と、一羽のカラスが家族だった。
楽しかった。家族全員で過ごす時間は、私にとっての宝物だったさ。
あぁ、本当に……楽しかった。
けど、その毎日は、「あの日」を境に絶望へ変わった。
あの日、周りの人々は私をこう言った。
「魔女だ」と。
魔女呼ばわりされた私は、その場で殺された。
……首をザックリ斬り落とされたんだ。痛みは無かった。一瞬の出来事だったからな。
聞いた話じゃ、あの直後に家族全員も殺されたらしい。
お、今不思議に思っただろ。
じゃあ、何で私は此処にいるのか、って。
はははっ、そう驚くなって。お前の考え位お見通しさ。
殺された事が納得出来なかった私は、ある感情に埋め尽くされた。
怒り、憎しみ、悲しみ。
つまり、人が憎かった。
だから、その感情のエネルギーで蘇ったんだ。
完全な「魔女」として。
魔女となった私は自分の故郷へ行き、人間の命を奪った。
死体なんて残らない。全員煙になったよ。
人間は私に懇願した。「殺さないで」って。
まぁ……無視した。全員殺した。
その片隅で家族を探したが……案の定、殺されてた。
感情に身を任せ、人間の命を奪い、私は笑った。
ざまあみろ、私を殺すからだって、ずっと笑ってた。
その後、兵士や暗殺者みたいな奴等が私の命を狙うようになった。
鬱陶しいと思った私は、この森に逃げ込んだ。
そうしてから数百年。
お前が、やって来たんだ。
……怖いだろ、私が。
強がったって無駄だ。顔面蒼白じゃないか。
……怖くないって、まだ嘘を付くのか。
はははっ……良い。良いな。お前、気に入った。
気に入ったから、殺さないでおいてやる。
あ、一つ忠告しておくぞ。今の話は誰にも言うな。
言えば……どうなるか位、分かってるよな?
じゃ、お前とはサヨナラだな……まぁ、
お前とは、また何処かで会えそうな気がするよ。
じゃあな、人間。
俺の意識はそこで途切れ、目が覚めると家にいた。
あの時、俺が見て、聞いた事は、恐らく夢じゃない。
頭に焼き付いたかの様に離れなくなる程に、忘れられなかったから。
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