Ep8 戦いの傷跡
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「あとお客さん、無理はいけないっすよー。その身体でよく立っていられますねぇ。やせ我慢しても何にもなりませんし、ここで倒れられても困るんですよ。空いてる部屋があるんで、そこで休みません?」
一目で、フェロンの体調を看破してのけた。
実際、そうである。
繰り返される魔物の襲撃。腕に自信のある彼だって、繰り返し戦えば疲弊する。リュクシオンが暴走して魔物化してから半年。国外に逃がされた人々は己の国の滅亡を知って魔物化し、それを知った彼らの親しい人々が魔物化し、魔物に襲われて大切な人を失った人たちが魔物化し……負の連鎖は、ずっと続いている。
その中でフェロンは戦って、闘って、ただ勝って。勝つので精一杯になって。国が滅んだあと、何をするともなしに放浪し、意味もなく生きていた。そんな日々を送っていたなら、ボロボロでないはずがない。
「自分にも兄さんがいてね、戦いの果てに死んじまったんすけどー。お客さん見てると思いだしまっさー」
しみじみと、宿の主が言った。そんな彼に、フェロンは問う。
「あなたの……名前は」
その問いに、宿の主は明るく答えた。
「自分? 自分っすか? ルードってぇ言います。これからもどうぞごひいきにー」
「フェロンだ。改めてよろしく」
「フェロンさん、りょーかいっすー。なーんか、アーヴィーさんといい、フィオルさんといい、フェロンさんにリクシアさんといい……。ウチは普通じゃないお客さんばっかりが集まるみたいで……。まぁ、面白い話が聞けるし、金さえくれりゃ、ウチとして文句はありませんがねー」
ルードはそんなことを言った。のんきに見える彼にも、何か思うところはあるのだろう。
アーヴィーやフィオルなんて人は知らないけれど、魔物が何か関係する人物なのかなとフェロンは思った。
しばらくして、リクシアが戻ってきた。
「フェロン、ハイこれ!」
山ほどの薬草の束を背負って。フェロンはそれを見て呆れた声を出す。
「……いったいどこから持ってきたの」
その問いに、リクシアは元気よく答えた。
「町の人が分けてくれたのー! だからもう、大丈夫!」
「……ありがとう」
フェロンはそっと動き出す。大丈夫、まだ動ける。――まだ、戦える。
「じゃぁ、部屋に行こう。治療しなくちゃ」
一歩一歩。確かめるようにフェロンは歩く。
リクシアは言う。
「色々あったの、いろいろ、ね。あとで聞いてくれる?」
フィオルとアーヴェイとの出会い。そしてその別れの物語を。
大好きな幼馴染に、知ってほしいから。
――時間は、動いた。
悔恨の白い羽根。首から下げたそれを、リクシアはそっと握りしめる。そして
今はどこかでまた生きているあろうかつての友に向かって、祈りをささげた。
――私は平気。だから、そっちも。
無事に
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