第73話『顕現』
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「ありがとな。いっちょ正面からぶつかってやるよ!」
その声に全員に勇気が宿る。これが本当の最終決戦。誰も死ぬことなく、世界を守るために戦うのだ。
「──ッ!!」
耳を塞ぎたくなる程のイグニスの大きな咆哮が轟く。戦闘態勢だ。イグニスは大気を急速に吸い込み始める。それはまるで、周りの生命をも吸い込んでいるような──
「早速ヤバそうなのが来るぞ! 避けろっ!」
全員が即座に左右に回避。するとその合間を炎のブレスが迸った。通った跡には炭すら残らず、地面が抉れている。
「うわ間一髪・・・当たったら骨まで全部溶けそう」
「怖いこと言わないで下さい…」
しかし終夜の言葉は事実だろう。ブレスが通っただけで、触れてもないのに高熱で肌がヒリヒリする。もはや炎熱というよりは溶岩の様だ。直撃すれば跡形もなく融解されるだろう。
「守ってばっかじゃいずれ死ぬぞ! 突っ込め!」ダッ
「一真さん!?」
「ボサっとすんな! 女にかっこいい所見せるチャンスだぜ!」
「……っ、あぁもう!」ビュオ
言葉で丸め込まれ、晴登は自身と一真の足に風を付与した。当たれば死ぬが、当たらなければどうということはない。つまり逃げ切る作戦である。幸いか、相手はデカくて鈍い。ヒョウの時の様に逃げ回る必要は無さそうだった。
「こりゃいいぜ! ぶった斬ってやるよォ!」ブシャア
疾風の如き速さですぐさま間合いを詰め、一真の一太刀がイグニスの右足首を捉える。長い太刀から繰り出された斬撃は、鱗をも切り裂き血の雨を降らした。だが、それだけでは大したダメージでは無いようで、イグニスは一真を踏みつけようとする。
「うぉっ、危なっ!?」ヒュ
「援護します! 鎌鼬!」ブシャア
鋭い風の刃。しかし、晴登の力では鱗を切り裂く程度であり、一真の一撃には及ばなかった。
二人は一度後退し、様子を窺う。
「…厄介ですね、あの鱗」
「あぁ。本気で斬ってあの程度だ。正直言って有効打にはならねぇ」
その言葉に、晴登はイグニスを見上げる。
本来、生き物ならば弱点は心臓だ。そこを潰して心肺機能を停止させることで、絶命に至らしめることができる。ただイグニスの場合は体躯が大きいせいで、心臓があるはずの胸部まで手が届かない。
「四つん這いの竜だったら楽だったのになぁ」
「せめて俺が飛ぶことができれば…!」
"空を飛ぶ"ということを、風を操る晴登が考えない訳が無かった。ただ、風で身体を浮かして自由に動かすには、バランスを常に意識しなければならない。しかし訓練も積まない並大抵の人間に、それだけの平衡感覚は持ち合わされるはずもな
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