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真田十勇士
巻ノ百四十五 落ちた先でその十二

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「律儀でならぬと思われておるしな」
「天下人、公が約束を破ってどうなるか」
「それでは天下に示しがつかぬ」
「だからですな」
「大御所殿は今も約束を守られた」
「そうなのですな」
「そうじゃ、右大臣様を薩摩まで行かせてじゃ」
 大坂の戦で死んだ、そういうことになっていてもというのだ。
「約束を果たされるのじゃ」
「左様ですか」
「では、ですな」
「我等は無事にですか」
「薩摩に入ることが出来ますか」
「そのことは」
「それは出来る、そしてじゃ」
 幸村は十勇士達に間道を進みつつ話した、大柄で太っていてしかも山道を歩いたことがない秀頼は間道を進むことに苦労していたが彼等にとっては真田道と比べれば実に楽な道で幾ら歩いてもどうということはなかった。
「我等はな」
「薩摩に入り」
「時が来れば」
「密かにですな」
「駿府に向かいそして」
「最後の戦ですな」
「それをするぞ、しかしその時もじゃ」
 最後の戦でもとだ、幸村は十勇士達に話した。
「我等の誓いは忘れるでない」
「はい、何があろうとも」
「死ぬ時と場所は同じですから」
「死ぬことはですな」
「なりませぬな」
「そうじゃ、右大臣様の御前に戻ると誓ったのじゃ」
 それならというのだ。
「絶対にじゃ」
「例えどれだけ激しい戦になろうとも」
「恐ろしい敵がどれだけ出ようとも」
「それでもですな」
「誰一人として死んではならん」
「そうですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そうしてじゃ」
「皆で薩摩に戻り」
「右大臣様に勝ちを報告するのですな」
「我等全員が戻り」
「そうしますな」
「そうじゃ、戦に勝って終わりではない」
 それだけではないというのだ。
「それはじゃ」
「薩摩に戻り」
「右大臣様に申し上げる」
「それで、ですな」
「全てが決まりますな」
「そうなりますな」
「そういうことじゃ、何としてもじゃ」
 まさにというのだ。
「我等は全員で戻るぞ」
「最後の戦の時も」
「そうしますな」
「生きるの死ぬも同じ」
「あの誓いのままに」
「そうするぞ、そして戦が終われば」
 そして薩摩に戻ったその時のこともだ、幸村は話した。
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