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真田十勇士
巻ノ百四十五 落ちた先でその十一

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「お気遣いなく様」
「そうか」
「はい、それでは」
「これよりな」
「薩摩でもお達者で」
「お主もな」
 二人で言葉を交えさせてそうしてであった。
 加藤は秀頼と家臣達に別れを告げ城で密かに見送った。この時に別れも宴も開き城内で盛大にそれを楽しんだ。
 そしてだった、その宴の後で。
 秀頼達は夜密かに城を出て間道から薩摩に向かった。この時にだ。
 幸村と長曾我部、明石は十勇士達と共に秀頼と国松の警備を行っていた。治房は秀頼と国松の傍を離れない。
 その中でだ、十勇士達は幸村に密かに話した。
「気配はしませぬ」
「敵の気配は」
「伊賀者や甲賀者の気配も」
「全くしませぬ」
「ふむ。来るやもと思っておったが」
 幸村も周りに気を張らずに述べた。
「しかしな」
「それでもですな」
「今はですな」
「幕府もですな」
「何もしませぬな」
「薩摩には入らせてくれるか、そして」
 幸村はさらに話した。
「右大臣様はな」
「そのままですな」
「薩摩で暮らさせてくれるのですな」
「幕府としては」
「そうした考えですな」
「その様じゃな」
 まさにとだ、幸村は十勇士達に話した。
「やはり幕府はな」
「右大臣様のお命は、ですな」
「取るつもりはないですな」
「国松様についても」
「左様ですな」
「そうじゃな」
 こう言うのだった。
「やはり」
「ここまで何もしてきませんでしたし」
「逃げることは察していても」
「海でも襲ってきませんでした」
「そして熊本城に入るまでもです」
「一切でしたし」
「今も」
 十勇士達は常に気を張っていた、幕府が仕掛けてくればその時は秀頼を命を賭して守ろうと決めていたのだ。
 だが、だ。今もだった。
「どうもです」
「攻めてきませんね」
「気配すらしません」
「では、ですね」
「今もですね」
「薩摩にですか」
「行ってもよいということか、そうしてな」
 幸村はさらに話した。
「大御所殿は太閤様との約束を果たされる」
「右大臣様を頼む」
「そのお言葉を確かにですな」
「守られるのですな」
「その様にされるのですな」
「あの御仁の本質は律儀じゃ」
 若い頃から言われている様にというのだ。
「約束を破ることはどうしてもな」
「出来ぬ方ですな、やはり」
「天下人になっても」
「約束は守る」
「それは絶対の方ですな」
「うむ、天下を手に入れると余計にな」
 家康はこれまで以上にというのだ。
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