巻ノ百四十五 落ちた先でその八
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「間もなく我等は薩摩に入る、そしてな」
「そうしてですな」
「以後は薩摩においてですな」
「我等も生きるのですな」
「そうしてもらう、しかしじゃな」
秀頼はここで幸村と長曾我部、明石を見た。今ここにいる豊臣の家臣の中でまだ戦を思う者達を。
「お主達はもう一戦行くな」
「そうさせてもらいます」
「そして次の戦ではです」
「必ず勝ちます」
その通りだとだ、三人も答えた。幸村の後ろには大助と十勇士達が控えている。
「そしてそのうえで、です」
「薩摩に戻ってきますので」
「その時をお待ち下さい」
「わかった」
秀頼も確かな声で応えた。
「そうさせてもらう」
「それでは」
「さて、ではだ」
「はい、間もなくです」
「島津家から使者が来るな」
「そしてです」
幸村は秀頼に応えて述べた。
「その使者に案内され」
「薩摩に入るか」
「おそらく間道、島津家しか知らない様な」
「そうした道を通ってか」
「薩摩に入ります」
「そうしてか」
「そして薩摩に入れば」
幸村は秀頼にそれからのことも話した。
「もうです」
「薩摩から出ることはな」
「ありませぬ、その間道もです」
自分達が使うであろうとそれもとだ、幸村は話した。
「我等が使った後は」
「消されるか」
「そうなります」
「そうか、それで完全にじゃな」
「我等のことはです」
まさにというのだ。
「いなかったこととなります」
「大坂で確かに死んだ」
「そうなります」
「わかった、ではな」
秀頼は幸村のその言葉に素直に頷いた、だが。
幸村はここで長曾我部に顔を向けて彼に言った。
「申し訳ありませぬが」
「土佐のことはか」
「はい、最早」
「これも天命じゃな」
長曾我部は幸村に笑って応えた。
「結局わしは土佐の大名に返り咲けぬ」
「それがですか」
「わしの天命であろう、ならばな」
「それで、ですか」
「もうよいわ、ならわしもじゃ」
「薩摩において」
「一介の浪人として生きて死のう、しかしな」
長曾我部はここで目を光らせた、そのうえで幸村にこう言った。
「わしも戦いたい」
「では」
「うむ、真田殿が駿府に行かれる時はな」
「同行して頂けますか」
「槍で雑兵共の足止め位はしてみせよう」
そうして戦いに協力するというのだ。
「その様にな」
「それでは」
「うむ、土佐のことはもうよい」
これが長曾我部の今の考えだった。
「しかし生きておるのも何かとなるとな」
「それはですか」
「真田殿と共に戦うのも天命であろう」
そう思ってというのだ。
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